こんにちは。きのこのかわいさ知らしめたい!ちょこすき~☆です。
最近各地でナラ枯れの被害が広がっていることはご存じでしょうか?カシノナガキクイムシという虫(通称:カシナガ)が媒介する「ナラ菌」によりナラ・シイ・カシなどのブナ科の樹木が伝染病にかかり枯死してしまう被害が増えているのです。
そんなカシナガの被害木が多い森で、とある猛毒きのこが増えていると世間を騒がせています。その名はカエンタケ。
今日はそんなお騒がせきのこ、カエンタケに会いに行きましょう。
……え?猛毒きのこに会いに行くなんてもの好きですって?きのこは襲ってきませんよ!見るだけなら安全です。
カエンタケってどんなきのこ?
カエンタケは以下の特徴を持っています。
- 大きさ3~8cm
- 濃い赤~橙色
- 古くなると色が抜け褐色になる
- 表面に白い小さなツブツブがある
- 円筒型か枝分かれした指状
- 先端は丸いか尖る
- ややかたい
- 内部は白色
にょきっと突き出た指のような形です。尖った先端は白っぽくなることが多いので、爪が生えているように見えます。赤い指が地面から出ていたら、ちょっと驚きますよね。
カエンタケの名前の由来
枝分かれした形や、真っ赤な色合いが燃え盛る炎のようなので火炎茸と名が付きました。
上の写真のように、オレンジ色から赤黒い色のグラデーションが本当に炎のようで美しいですね。少し不気味さはありますが、とてもかっこいいきのこだと思います。
カエンタケはいつ・どこで会えるの?
ナラ枯れを起こした森、特に立ち枯れや切り株の近くの地上で見つけられます。
近頃は広大な範囲でナラ枯れが見られますが、カエンタケが発生するポイントは決まっているようです。ナラ枯れの森全体で見られるわけではないようで、ひとつ発生しているとその近くで次々と見つかります。
公園などで発生した場合は注意喚起のため発生情報がHPやSNSに掲載されますが、ほとんどがすぐに駆除されてしまうので意外と会うことが難しいきのこでもあります。いっぱい発生情報がある割に、駆除圧が強くて全然会えないんですよー!
カエンタケの毒性と観察時の注意
カエンタケは猛毒きのことして有名です。それは、食中毒だけでなく、触れただけでかぶれる可能性があるため、危険なきのことして注意喚起がなされているからです。見つけても絶対に触ってはいけません!
逆に言うと、触らなければ害がないとも言えます。ウルシなどと同じですね。
食べてしまった際の中毒症状は以下の通りです。
食後30分で中毒症状が現れる
頭痛・腹痛・嘔吐・下痢・しびれなど胃腸系と神経系の中毒症状
その後多臓器不全となり死に至る
皮膚や粘膜がただれる
髪が抜け落ちることもある
とても恐ろしい中毒症状です!でも個人的にはドクツルタケの方が怖いかなぁ。ドクツルタケはいったん回復したように見えてじわじわと命を奪う陰険さがありますし、味がおいしいらしいので気づかず食べてしまうかもしれません。カエンタケはあまり食欲を誘う見た目ではないですし、触ったときにかぶれるおかげで毒きのこと気づくのか、食中毒例は少ないです。公園等で注意喚起されている効果で、触ってかぶれた報告も目にしたことはないです。
カエンタケを見つけたら、写真を撮りたくなると思います。だって有名な毒きのこですからね!SNSにアップしたら話題になること間違いなし!いいね欲しい!
カエンタケに触れないように撮影するのは当然ですが、近づく前に被写体のほかに近くに別のカエンタケが潜んでいないかよーく観察しましょう。私は撮影に夢中になるあまり、すぐ近くにある別のカエンタケに手が触れて折ってしまったことがあります。やっちゃったー!!と焦りましたが、その時はかぶれずに済みました。(森を出た後ですぐに手を洗いました)でも、一度触ってかぶれなかったとはいえ、次もかぶれない保証はありません。カエンタケには絶対に触らないよう注意しなければなりません。
ちょこすき~☆が個人的にカエンタケより怖いと思っているドクツルタケの記事↓
カエンタケに似たきのこ
カエンタケに似たきのこの代表格がベニナギナタタケです。きのこに詳しい人が少ないので、公園管理者すら間違っている場合があります。
ベニナギナタタケは広葉樹林でも針葉樹林でもよく見られます。見分けるポイントは以下の通り。
- カエンタケより細いものが多い
- 色は赤だが橙色を帯びている
- 表面にツブツブがない
- 先端は細く尖る
- 柔らかくふにゃふにゃしている
- 内部も赤橙色
なにより、ナラ枯れしていない森でも非常によく見かけます。木の根元に限らず、林地全体にまばらに発生します。ベニナギナタタケをカエンタケと見間違えて必要のない駆除をしてしまうケースが散見されます。
きのこは子実体を取り除いたところで本体の菌糸が地下にありますからまた生えてくるのですが、無意味な駆除は生物多様性の保全から逆行するなぁと少し悲しい気分になるところです。自然は、美しいものも汚いものも危険なものも目に見えないものも色々含めて自然です。SDGs、考えたいですね。
ちなみにベニナギナタタケは食用にできるのですが、カエンタケをベニナギナタタケと間違えて採取し食べてしまうと中毒しますので要注意です。こんな風に間違えるというのも、カエンタケの実物を見て学ぶ機会がないことも一因ではないでしょうか。
どうしてカエンタケが増えているの?
カエンタケは本来珍しいきのこでした。都道府県によっては絶滅危惧種に指定されている場合もあるくらいです。それがなぜ、こんなに都市公園でも山でも見かけるようになったのか?
冒頭で説明した通り、カシノナガキクイムシという虫(通称:カシナガ)が媒介する「ナラ菌」により、ナラ・シイ・カシなどのブナ科の樹木が伝染病にかかり枯死してしまう被害が増えています。
カエンタケは、ナラ枯れの木の根元に生えるという特性があるのです。そのため、ナラ枯れが増えると同時にカエンタケもたくさん発生するようになったのです。ナラ枯れするとなぜカエンタケが増えるのかは、研究中で関連性が分かっていません。ただし、ナラ枯れによる環境の変化が、たまたまカエンタケが発生しやすい環境への変化だったと考えられています。
ではなぜカシナガの被害が増えたのでしょうか?
カシナガは健全な樹木に穿孔して幹の中に入り込み繁殖をします。このとき体に付いたナラ菌を持ち込みます。ナラ菌に感染した樹木はやがて枯死します。翌年、枯死した樹木の中でカシナガの幼虫が羽化して飛び立ち別の木に移動します。若く細い木よりも古く太い木の方が繁殖効率がいいので、ある程度の樹齢以上の木が選ばれるようです。
太いナラ・シイ・カシ類を残して細い木や下層木のみを伐採する公園型整備ではカシナガが繁殖しやすくなり被害を広げます。
里山でもかつては大きく育った木を薪として使用していたため、太い木がほとんどなくカシナガの被害も抑えられていました。薪を取らなくなったため里山でも古く太い木が増えており、被害木を放置することにより被害が拡大していると考えられています。
おわりに・正しく知って正しく恐れよう
カエンタケは公園など人目に付きやすい場所で発生してしまっている関係で、過剰に危険を煽る報道が多く怖がる人が増えました。なにか事故があってからでは遅いので、各自治体も管理している公園内のものは駆除しておかなければならないのでしょう。
未知のものに対する恐怖感は理解できるのですが、場所によっては土までバーナーで焼いているみたいで、過剰反応しすぎなきらいがありますね。菌糸は地中深く広大な面積に広がっているため、土焼いたところで意味ないんです。また出てきちゃいます。
カエンタケは襲ってきませんよ!見るだけなら安全です。
ヘビやハチや熊と違って向こうから襲ってくることがありません。
恐怖のきのこ!とか、殺人きのこ!とか、センセーショナルに言われていますが、触らなければ問題ありません。カエンタケが殺人をするわけではなく、カエンタケを使って殺人をするのは人間です。悪用しようと考える人間の方が本当は恐ろしいのです……。
毒きのこだからといって、むやみやたらに怖がる必要はありません。正しい知識を持っていれば適切に対処できます。
カエンタケを発見した場合は、自分で駆除しようなどと思わないでくださいね。触れるとかぶれる可能性がありますから、人が触れるような場所で発見した場合は公園等の管理者にお知らせください!目を離したすきにお子さんやワンちゃんが触ったらかぶれるかもしれないので、危険な場合は適切に駆除してもらいましょう。
きのこのかわいさ知らしめたい!きのこってかわいい。きのこってふしぎ。きのこっておもしろい。毒きのこも実際に自分の目で見てみなければ覚えることができません。写真や映像だけでは学べないものもあると思います。みなさんもかっこいいカエンタケに会えるといいですね。
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