去る都電。キヌガサタケ街ぶらつけば、井戸ひとつも無し。消ゆる水滴。若き夏、切なき渇き呈する。行きしな、持つと酷いバケツ等、ぶちまけたさが抜きん出とるさ。
(さるとでんきぬがさたけまちぶらつけばいどひとつもなしきゆるすいてきわかきなつせつなきかわきていするゆきしなもつとひどいばけつらぶちまけたさがぬきんでとるさ)
「きのこの女王」と呼ばれるキヌガサタケだが、この回文では「女王」というより「書生」を思わせる。
まあなんなら書生もマントを着ている印象があるので、キヌガサタケには合っているかもしれない。
真夏の日照りの中都電を降りた書生は、暑さと喉の渇きのあまり、道中民家の軒先に置かれている、汚い水の入った壊れたバケツをひっくり返したくなった。
といったところであろう。
それにしてもこのキヌガサタケの美しい姿にはどんな必然性があるのか。
永遠の謎である。
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