日本で一番多く栽培され、食べられているきのこ『えのきたけ』について、特徴やレシピ、栄養成分、ダイエットなどの各種情報を、このページにギュギュっとまとめました。
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えのきたけ(エノキタケ)とは
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えのきたけは、日本で栽培されている中で一番生産量が多く、日本一食べられているきのこです。
林野庁の統計によると1990年頃しいたけを抜き、以降ずっと生産量1位をキープし続けています。
(主要な特用林産物の令和2年の生産動向|林野庁。ただし近年ぶなしめじが猛追中)
なぜ、えのきたけはこんなにも日本人の心をつかんでいるのでしょうか。
元きのこ問屋で営業をしていた露木としては、次の4つの理由があると考えています。
- クセが無いので炒め物、焼き物、スープ、鍋料理などいろいろな料理に合う
- 万人受けしやすい味で嫌いな人が少ない
- 他のきのこに比べて値段が安く買いやすい
- ダイエット食材として注目されている
1パック当たり200g~300gとたっぷり入っているのに、他のきのこよりパック単価が安く売られている事も多いので、ついついカゴに入れちゃう人も多いのではないでしょうか。
もちろん、きのこ界NO.1の消費量を賄えるだけの生産体制もばっちり整っています。
えのきたけ栽培は機械化しやすく大量生産に向いていて、1生産者あたりの生産量が比較的多いんです。
大規模えのき生産者さんの施設は、まるで巨大工場です。
栽培されたえのきたけが1年中大量に流通している一方、自然界のえのきたけは主に冬に発生します。
真冬に雪を持ち上げて生える事がある為、ユキノシタ(雪の下)という俗称で呼ばれることも。
また、英語圏では冬のきのこという意味で、ウィンター・マッシュルーム(Winter mushroom)と呼ばれています。
天然物と栽培品の見た目の違い
『えのきたけの姿をイメージしてください』と言えば、ほとんどの方が細長い軸とちっちゃいカサを持った真っ白いきのこが、束になっている姿を思い浮かべるのではないでしょうか。
もちろんこの姿も正解です。
しかし、実は自然界で生えているえのきたけは全く違う見た目をしているんです。
これが自然界のえのきたけ↓
天然のえのきたけは全体に茶褐色でカサは大きく開き、なめこの様な粘りがあります。
軸は根元に行くほど黒っぽく、栽培きのこほど細長くは育ちません。
すごいギャップでしょう。
栽培えのきたけは消費者の好みに合わせて品種改良されたもの
なぜえのきたけは天然物と栽培品でこんなにもかけ離れた見た目になったのでしょうか。
それは、よりいっぱい食べてもらえるように、消費者の好みに合わせて品種改良されてきたからなんです。
元々栽培が始まった当初は、茶色~クリーム色のえのきたけだったのですが、その中で稀に白い株が出てくる事がありました。
ある時、その白いえのきたけのみを選別して出荷したところ、思いのほか市場評価が良く、お客さんから好評だったんです。
そこで、白いえのきたけが収穫出来るように、品種改良がすすめられることになりました。
最初はもやし栽培の様に暗い部屋で、光を当てずに栽培することでえのきたけを白くしていましたが、現在は光を当てても真っ白いまま育つ『純白系』の品種が主流になっています。
また、えのきたけの周りに紙やプラスチックを筒状に巻くことで、美味しい軸部分を長く育てる技術も開発され普及していきました。
えのきたけ栽培には、様々な工夫が凝縮されているんです。
天然物に近づけたブラウン系えのきも人気
近年は、天然えのきたけの色に近づけたブラウン系の品種も増えています。
白いえのきたけに比べて歯応えがあり、甘みが強く美味しいダシが出て、加熱すると少しヌメリが出てくるのが特徴です。
鍋の他、炒め物や味噌汁、茹でてサラダに和えても美味しいですので、まだ食べたことが無い方はぜひお試し下さい。
尚、ブラウン系のえのきたけは生産者さんがつける商品名がなかなか個性的で面白いです。
- ブラウンえのき
- 茶色えのき
- 琥珀茸(こはくたけ)
- 柿の木茸
- 山茶茸
- 山えのき
- むかしえのき
- ワイルドえのき
- 野生種えのき
- 野生のトラさん
- 甘くてシャキシャキ トラさんえのき
えのきたけの料理レシピ
えのきたけといえば、一番に思い浮かべるのは鍋料理では無いでしょうか。
白色が映えるし、スープにもよく絡み、ぐつぐつ煮込んでもシャキシャキした食感が残るので美味しく食べられます。
実際、鍋の季節に一番売れるきのこなんです。
ただ、クセが無く、鍋以外でも和・洋・中様々な料理に利用できるので、ぜひ一年を通して食べていただければと思います。
参考までに、えのきたけのレシピをいくつか紹介いたします。
えのきたけの味噌汁
えのきたけはクセが無いといいますが、実はほんのり甘みのあるダシが出るので、お味噌汁に入れるとぐっと美味しくなります。
白いえのきたけを使った時と、茶色いえのきたけを使った時で出汁の味が変わるので、ぜひ試してみて下さい。
ブラウン系えのきの一種『甘くてシャキシャキ、トラさんえのき』は、なんとシジミの約10倍のオルニチンを含んでいるので、飲んだ翌朝のお味噌汁にぴったりです。
えのきたけ生産量1位の長野県では味噌汁は定番。
えのきスープ(ポタージュなど)
きのこの栄養を余すことなく摂るという意味では、ポタージュなどのスープがおススメです。
えのきたけの旨味や栄養素の多くは固い細胞壁中に閉じ込められているので、普通に調理しても効率的に摂取することが出来ません。
ミキサーなどで細かく粉砕しじっくり煮込む事で、えのきたけの固い細胞壁が壊れ、旨味や栄養が溶け出しやすくなります。
えのきそうめん
茹でたえのきたけとそうめんを一緒にいただくレシピです。
麺つゆで、つるん、さらっと食べられるので、食欲が出ない暑い日におすすめ!
また、夏にきのこを食べた方が良い合理的な理由もあります。
- 汗と一緒に流れてしまうビタミンやミネラルをきのこで補充できる
- ヘルシーで食物繊維が豊富、ダイエット効果も期待できる
- 夏はきのこが安く手に入りやすい
エノキタケのマーボー豆腐
きのこ料理研究家まんぼママ考案の、夏に食べたい熱々えのきたけレシピ。
マーボー豆腐のとろみはエノキタケでつくので、水溶き片栗粉要らずです。
えのきたけの天ぷら
えのきたけ生産量日本一の長野県では、お蕎麦屋さんに行くとよく『えのきたけの天ぷら』が出てきます。
これがまた美味しいんです!
えのきは洗う?洗わない?
皆さんは、えのきたけを調理する前に洗いますか、洗いませんか。
以前えのきたけ生産社さん4軒にアンケートを取ったところ、4軒とも『洗わないで使う』という答えでした。
その理由は『クリーンな環境で栽培しているから』と、『加熱して食べる事が前提だから』。
また、えのきたけは水に濡らすと劣化が早まり風味が落ちてしまうので、気になる方はキッチンペーパー等でさっと拭くくらいにしておきましょう。
尚、どうしても洗いたい方は、調理の直前にさっと流水で洗うくらいなら劣化しないので大丈夫とのことです。
えのきたけの栄養成分
下表は、可食部100gあたりに含まれているえのきたけの栄養成分です。
エネルギー | 22kcal |
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水分 | 88.6g |
たんぱく質 | 2.7g |
炭水化物 | 7.6g |
カリウム | 340mg |
リン | 110mg |
亜鉛 | 0.6mg |
ビタミンB1 | 0.24mg |
ビタミンB2 | 0.17mg |
ナイアシン | 6.8mg |
ビタミンB6 | 0.12mg |
葉酸 | 75μg |
パントテン酸 | 1.40mg |
食物繊維総量 | 3.9g |
日本食品標準成分表2015年版(七訂)|文部科学省から抜粋
多くの方がイメージしている通り、えのきたけは低カロリーで食物繊維が豊富なきのこです。
また、ビタミンB1やB2、ナイアシンなどのビタミン類や、カリウム、リン、亜鉛などのミネラルなども豊富に含まれていて、栄養満点な食材と言えるでしょう。
さらに、近年ではキノコキトサンやエノキタケリノール酸など、ダイエットに有効とされる成分を持つ事が分かり、ダイエット食材としても話題です。
カロリー
えのきたけは低カロリーな食材です。
えのきたけ | 22kcal/100g ※日本食品標準成分表2015年版 |
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ブラウン系エノキ | 17kcal/100g ※長野県の生産者さん調べ |
通常販売されている白いえのきたけは200g入りが多いので、石突を切り落とした後の可食部が170gとして(廃棄率15%)、1袋あたりのカロリーは37.4kcalと考えましょう。
食物繊維
えのきたけの食物繊維総量は3.9g/100gです。
数字だけ見るとピンとこないかもしれませんが、繊維が豊富なイメージのあるキャベツの食物繊維総量は1.8g/100g。
つまり、えのきたけはキャベツの2倍の食物繊維を含んでいるんです!
≪えのきの食物繊維内訳≫
水溶性食物繊維 | 0.4g/100g |
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不溶性食物繊維 | 3.5g/100g |
日本食品標準成分表2015年版(七訂)|文部科学省から抜粋
キノコキトサン
キノコキトサンは、色々な食用きのこに少量含まれている成分です。
水にも胃酸にも溶けないキノコキトサンは体内に入ると膨張し、胃をコーティングして油の吸収を阻害する働きがあると言われています。
また、油分を食べた後に摂取しても、油自体をコーティングし体外に排出してくれる性質があるため、ダイエットに最適とされているんです。
キノコキトサンは、きのこ類の中でも特にえのきたけに多く含まれています。
エノキタケリノール酸
エノキタケリノール酸は、その名の通り現在えのきたけからしか見つかっていない成分です。
新陳代謝を活性化し、内側から燃焼させる効果があることがヒト介入試験試験により確認されたため、ダイエットに有効な成分とされています。
えのきダイエット
食物繊維やキノコキトサン、エノキタケリノール酸などの成分を持ち、かつ低カロリーでヘルシーなえのきたけは、ダイエットに有効なきのことして度々メディアで紹介され、そのたびにえのきダイエットブームが巻き起こってきました。
特に有名なのが『えのき氷』と、乾燥えのきたけを使った『えのき茶』です。
2種類のえのきダイエット方法をご紹介いたします。
えのき氷ダイエット
えのきたけのダイエットに有効な成分は固い細胞壁の中にあり、通常の調理方法だけでは効率的に摂取できません。
そこでえのきたけをミキサーで粉砕し、じっくり煮込み、凍らせるという3段階の工程を経ることでえのきたけの細胞壁を壊し、栄養を摂りやすくしたものがえのき氷です。
えのき氷の作り方
- えのきたけの石突を切り落とし、可食部を3等分位にざく切りにする
- えのきたけと同量の水を一緒にミキサーに掛けペースト状にする
- ペーストを鍋で焦げ付かないように気を付けながらじっくり1時間程度加熱
- 冷ましてから製氷皿に入れ一晩冷凍したら出来あがり
えのき氷の使い方
ダイエット効果を得るには、えのき氷を1日に3キューブ摂取するのが目安と言われています。
簡単な使い方は、スープや煮物を作る時に鍋にぽんっ。
料理の味は邪魔せず、ほんのりえのきたけのダシが出て美味しいです。
炒め物に使う場合は、半解凍させて他の材料と一緒に炒めればOK。
ちなみに、電子レンジでチンすると簡単に半解凍状態に出来ます。
えのき茶ダイエット
えのき茶は、干したえのきたけを熱湯で煮出して飲むダイエット飲料です。
乾燥させることでえのきたけの細胞壁が壊れ、エノキタケリノール酸やキノコキトサンなどのダイエット成分が溶け出しやすくなります。
えのき茶の作り方
- えのきたけの石突を切り落とし、可食部を3等分位にざく切りにする
- ザルや網などで天日干しする
※えのきたけがしょぼしょぼにしぼんで手触りがカサカサになってきたらOK - 仕上げにフライパンで5分位炒って水分を飛ばす
- 急須などで煮出して飲む
乾燥えのきたけ5gに対し、300~500mlのお湯が目安。
1日かけてゆっくり飲みましょう。
えのきたけの賞味期限
えのきたけに限らず、現在のところきのこは生鮮食品として扱われているため、賞味期限の表示義務はありません。
そこで、目安となる日持ち日数を生産者さんに聞いてみました。
しっかり包装されたえのきたけは冷蔵で1週間程度日持ちします。
ただし、下記のような諸条件によって日持ちは短くなってしまうので、出来るだけ早く使ってくださいとのことでした。
- 生産工場からお店まで流通に時間が掛かってしまった
- 販売する時に温かい所に置かれていた
- 袋に小さな穴(ピンホール)があいていた
- 開封した
また水に濡れてしまうと劣化が早くなるので基本的には洗わずに使用し、汚れが気になる場合は調理の直前に流水でさっと洗って下さい。
えのきたけは劣化すると色や見た目がどう変わる?
劣化したえのきたけは白色から黄色がかった色に変化していき、全体に水っぽくなります。
またピンと張っていた軸がへにゃっと柔らかくなってきたら劣化の合図。
残念ながら食べるのはあきらめましょう。
えのきたけを長期保存する方法
えのきたけを長期保存する方法を3つ紹介いたします。
- 冷凍保存方法
- 乾燥保存方法
- なめたけ(瓶詰)
冷凍保存方法
えのきたけは冷凍保存が可能です。
石突をカットし、調理しやすい長さにカットしてから冷凍しましょう。
冷凍したえのきたけを調理に使う時は、解凍せずにそのまま鍋やフライパンに投入するのがポイントです。
普通に解凍してしまうと、ドリップが出てしまうのでご注意ください。
乾燥保存方法
えのきたけの生産地では、昔から乾燥保存という手段が用いられていました。
えのきたけを適度な長さにカットし、ザルや網などに重ならないように並べて天日に干します。
日中に干し、夜は家の中に入れてください。
晴れていれば2日くらいで乾きます。
しょぼしょぼにしぼんで手触りがカサカサになったら乾燥出来た証。
最後にフライパンで5分程度炒って仕上げましょう。
乾燥えのきは急須で煮出してえのき茶として飲んだり、お味噌汁を作る時に入れて、ダシや具として利用してください。
なめたけ(瓶詰め)
昔からえのきたけを使った保存食として親しまれてきたのが『なめたけ』です。
カットしたえのきたけを煮込み、味を付けてビン詰めにします。
いわゆる”ご飯の友”。
ただ、市販品はクエン酸などで酸味を強くすることで保存期間を延ばしていますが、自家製で作ったなめたけの保存期間は冷蔵で1週間くらいとお考え下さい。
えのきたけの栽培方法
えのきたけは1960年ごろ、長野県の松代で人工栽培がスタートしました。
そのため、JAグリーン長野 松代農業総合センター 農産物直売所には『えのき茸発祥の地』の看板が建っています。
当時、えのきたけ栽培は雪で農作業が出来ない冬季間の貴重な収入源として普及し、長野県の特産品としてどんどん生産者が増え、規模が拡大していきました。
現在ではえのきたけの生産戸数自体は減ってきているものの大規模生産者が増え、逆に生産量は年々伸びてきています。
培地原料にトウモロコシを使う派とオガ粉を使う派に分かれている
現在、えのきたけを栽培するための培地の主原料は『コーンコブミール』というトウモロコシ芯の粉末を使うのが主流です。
コーンコブミールの培地で育てたえのきたけは、一般的に品質が安定し、収量もアップして、ほんのり甘みが出ると言われています。
トウモロコシでえのきたけが栽培出来るなんてすごいですよね!
一方、少数派ではありますがオガ粉を主原料にしてえのきたけを栽培している生産者さんもいます。
そういった生産者さんの一人が『きのこは木から生える方がより自然だから』と、オガ粉栽培にこだわる理由を教えてくれました。
オガ粉で栽培したえのきたけは繊維がしっかりしていて、食感が良いのが特徴と言われています。
えのき栽培キット
自宅でえのきたけの栽培が体験できる『えのき栽培キット』が販売されていて人気です。
キットの中にはえのきたけの菌糸を蔓延させた『菌床』が入っていて、付属の説明書の通りにセットすると、通常2~3週間で芽が生えてきます。
そこからの成長は早く、数日でえのきたけがわっさわっさになります。
尚、えのきたけの発生の為には、夜間の最低気温が15℃以下になる必要があるため、基本的には秋~冬の限られた期間にしか販売されていません。
栽培適温は10~18℃ですので、暖房のきいていない部屋内の直射日光が当たらない場所に設置して栽培しましょう。
露木が以前育てた『えのきたけ農園』からは、ブラウン系えのきが生えてきました。
当然大きくなったものは収穫して食べることが出来ます。
非常に味が濃く甘みがあり、自家製なめたけ丼を作ったら絶品でした!
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