毎年ゴールデンウィークから初夏頃になると、光るキノコのニュースをよく見かけるようになります。
『光るキノコ』というのは作り物でもライトアップしているわけでもなく、まぎれもなく自身が発光するキノコのこと。
世の中には本当に光るキノコが存在するんです。
種類もたくさんあり、こんなロマンチックな名前が付いている子もいます。
- シイノトモシビタケ(椎の灯茸)
- ヤコウタケ(夜光茸)
- ツキヨタケ(月夜茸)
- ギンガタケ(銀河茸)
実は、今名前を挙げた光るキノコの一つ『ヤコウタケ』は、毎年栽培キットが販売されていて、自分で育てることもできます。
そう、自宅で光るキノコを観察することが出来るんです!
そして今年もヤコウタケ栽培キットが販売される季節がやってまいりました。
ということで今回は、実際にヤコウタケ栽培キットに挑戦した体験記を紹介いたします。
光るキノコ『ヤコウタケ』の栽培キットが毎年期間限定で発売されている
ヤコウタケ栽培キットは、三重県にある岩出菌学研究所さんが販売している観賞用の栽培キットです。
気温に敏感なキノコのため栽培できる時期が限られ、毎年4月下旬から6月上旬くらいまでの期間限定で販売されます。
割とすぐ売り切れてしまうので、入手したい方は4月中旬くらいからサイトをチェックするか、岩出菌学研究所さんの各種SNSなどをフォローしてチェックしておきましょう。
この時期は、キノコ好き達のタイムラインが『ヤコウタケの栽培を始めました』『ヤコウタケが光った!』などの投稿で賑わうのが風物詩です。
尚、しいたけ栽培キットやヒラタケ栽培キットなどの一般的なきのこの栽培キットに比べると、ヤコウタケ栽培キットは難易度高し。
私、過去に4回位この栽培キットに挑戦していますが、勝率は五分五分くらいです。
ヤコウタケ(夜光茸)とは
ヤコウタケ(夜光茸)は、降水量の多い5~6月頃に主に小笠原諸島の父島や伊豆諸島の八丈島などで見られる光るキノコです。
小笠原諸島では『グリーンペペ』という俗称で呼ばれることも多く、その名の通り緑色に光ります。
傘の直径が1~3㎝くらいの小さめのキノコですが、日本の発光キノコの中では一番明るいとされ、たくさん集めれば本の字も読めるとか。
一度は群生する様子を見てみたいものです。
ヤコウタケは食不適
念のため、ヤコウタケは食べられないキノコです。
ヤコウタケに毒性は見つかっていませんが、カビ臭くて美味しくないため食用には向いていません。
一般的に販売されているほとんどのキノコ栽培キットは食用になりますが、ヤコウタケ栽培キットはあくまで観賞用なのです。
ヤコウタケ栽培キットの中身
ヤコウタケ栽培キットを注文すると数日でキットが届きます。
中にはこんなものが入っていました。
- 栽培容器(この中で育てる)
- 種菌(ヤコウタケの菌糸が蔓延している)
- 腐葉土(保湿のため)
- スポイト(水やり用)
- 説明書
この他に温度計、湿度計、霧吹きがあると便利とのことでした。
いままでしいたけ栽培キットやえのき栽培キット、きくらげ栽培キットなどに挑戦してきましたが、ずいぶん毛色が異なる感じ。
なんだか理科の実験キットみたいな雰囲気です。
説明書の裏は、観察記録が付けられるようになっていました。
ヤコウタケ栽培キットの準備
ヤコウタケは生き物ですので、栽培キットが届いたら出来るだけすぐにセットします。
菌を扱うので、石鹸でしっかり手を洗ってから作業に入りましょう。
- 種菌を透明容器の中にすべて移し、指で押して大体3cmくらいの高さにします。
※空間があるとそこからカビが生える恐れがあるため、揺らしても動かないくらいしっかり平らにした方が良いようです。 - 腐葉土を指でつまんで透明容器に入れた種菌の真ん中くらいにこんもり乗せます。
- 霧吹きで全体を湿らせ、フタをしてセット完了です。
岩出菌学研究所さんのセッティング動画が分かりやすいので、ぜひ併せてご覧ください。
ヤコウタケの栽培管理
セットしたヤコウタケは、毎日観察しながら大事に育てます。
日々の栽培管理を紹介いたします。
栽培適温 | 23~27℃ 朝晩の室温が20℃くらいでも、日中25~26℃に達すれば問題ないそうです。 |
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栽培湿度 | 基本、腐葉土が艶やかに見えるようにたっぷり水分があれば大丈夫。 |
栽培難易度 | ★★★★☆ (昔の説明書に本当にこう記載されていました) |
栽培する場所
ヤコウタケ栽培キットは室内用の栽培キットです。
直射日光のあたらない場所に置いて育てましょう。
室内の明かり程度なら遮光しなくても大丈夫とのことですが、蛍光灯などに近付けすぎるのは良くないようです。
僕は遮光のつもりで、キットが入っていた箱を隣に置いておきました。
水やり方法
毎日の水やりは、付属のスポイトで腐葉土めがけて滴下するのが基本です。
種菌の表面が乾いたら軽く霧吹きで保湿しましょう。
乾いても良くないのですが、種菌の表面が水たまりになっても良くありません。
可愛さあまって、つい水をあげすぎてしまうのが『ヤコウタケ栽培あるある』です。
気を付けましょう。
栽培に適した温度
ヤコウタケの栽培適温は23~27℃です。
28℃を超えると元気がなくなりカビ菌に負けてしまうため、暑くなりそうな日は風通しの良い場所に移すなどして管理しましょう。
朝晩20度くらいまで下がる分には大丈夫だそうです。
ヤコウタケが光るまで【観察日記】
仕事部屋にセットしたヤコウタケ栽培キット。
一度芽が出たら成長が早いそうなので、見逃さないようにしっかり毎日チェックしていきたいと思います!
・・・
と意気込んでいたら、実はここから10日間目立った変化がありませんでした。
11日目、なんとなく腐葉土の横の白い点が目に留まります。
『ん?これはキノコの芽っぽい?!』
翌日、白い点は更に大きくなっていました。
やはりヤコウタケの芽だったようです。
芽の状態でも光るのかな?と暗闇で観察してみたところ、腐葉土の周囲が薄ぼんやり光っているような気もします。
ただ、写真には写りませんでした。
ヤコウタケが光った!
ヤコウタケ栽培キットをセットしてから18日目。
かなりきのこらしい形状に成長しました。
ヒダがめくれあがっているため、勝手に『マリリンモンロー型』と命名。
それをツイートしたら、岩出菌学研究所の公式ツイッターさんが『ヒダが厚いとモンロー型に育つ傾向がある』と教えてくれました。
たしかにカサに厚みがあります。
そしてついにその時は来ました。
夜、おそるおそる電気を消すと・・・
光った!!
ヤコウタケが緑色に発光しているのを確認できます。
昨日まではぜんぜん光らなかったのに、カサが開いたとたんにこんなに明るく光るなんて。
人工の光じゃないなんて信じられないくらい、きれいな緑の光です。
軸よりヒダの方が強く光っているのが観察できました。
その翌日も、ヤコウタケの発光が見られました。
1日目より明るさが更に増しています。
暗闇に持っていかなくても光っているのが分かるくらいでした。
反対側から撮影すると光がガラスに反射して、これもまたきれい。
動画撮ってみました↓
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ヤコウタケの光は3日目まで確認できました。
光らなくなったヤコウタケは取り除き次の発生に備えよう
4日目になると、ヤコウタケは萎れてしまいました。
この状態で暗くしてみても光は確認できません。
どうやら萎れてくると光らなくなるようです。
光らなくなったヤコウタケはそのままにしておくとカビの原因になってしまうので、感謝の気持ちを持って手厚く取り除きます。
ヤコウタケ栽培キットは、条件が良ければ2~3回目の発生も期待できるとのこと。
萎れたキノコを取り除いた後は、1回目と同じように湿度と温度に気を付けながら栽培管理します。
次の発生が楽しみです!
なぜヤコウタケは光るのか?
ところで、ヤコウタケはなぜ光るのでしょうか。
気になって検索してみたところ、その答えが農林水産省の『こどもそうだん』のページに記載されていましたので、引用して紹介いたします。
ヤコウタケ(夜光茸)は1cmくらいの発光性(はっこうせい)のきのこで、小笠原諸島(おがさわらしょとう)に自然分布(ぶんぷ)しています。
光るきのこは日本で10種類以上見つかっており、そのうち8種類以上が八丈島(はちじょうじま)で確認(かくにん)されています。
ヤコウタケにふくまれるヒスピジンという物質(ぶっしつ)とヤコウタケの酵素(こうそ)が反応(はんのう)して発光することが解明(かいめい)されました。
ヤコウタケの名前からすると夜しか光っていないイメージを受けますが、常時(じょうじ)光っていています。出典
森林大百科事典(独)森林総合研究 朝倉書店2009年8月25日初版第1刷
なるほど!
ヤコウタケ自身が持つヒスピジンという物質と酵素が反応して発光する仕組みなのですね。
でも、『何のために光るのか』の答えは農林水産省のホームページにも、他のページにも書かれていませんでした。
そればっかりはヤコウタケ自身じゃないと分からないのかもしれません。
ヤコウタケ栽培キット、のまとめ
- ヤコウタケ(夜光茸)は、5~6月頃に主に小笠原諸島や八丈島などで見られる光るキノコの一種
- ヤコウタケを自分で栽培できるキットが毎年期間限定で発売されている
- 難易度は高いが、キノコが緑色に光る光景は感動的!
自分で栽培してみたら、ますます八丈島に群生する光るキノコを見に行きくなりました。
キノコが光る光景は一見の価値ありです。
ご興味ある方はぜひ挑戦してみて下さい。
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