ニクウチワタケ(Abortiporus biennis)
きのこ散策をしていると、落枝や埋没枝、腐朽木から出ているサルノコシカケ類が気になっていました。子実層がはっきりしていて乱れた管孔がある。何となく赤味のあるベージュっぽい多肉質のきのこ。
梅雨時から秋口まで気にかけているとよく見かける謎のきのこ。かれこれ3年あまりこの気になるきのこについて考えていました。どの図鑑を見てもそれらしいものがない。
ただ、ネット上で、グロテスクなストロベリーアイスのようなきのことして、Hydnellum peckiiというマツバハリタケ科チャハリタケ属のきのこの写真が目につきました。「自分が見ていたきのこはこれだろうか…?比較的緯度が高い北方性のきのこ。と聞いているけれど、これ…?」と、またしても数年、きのこの名前が分かりませんでした。
そんな折に、子供を連れて出かけた動物園内で、大きなきのこを見つけました。ニクウチワタケとイタチタケ?と思しききのこが腐朽木から出ています。
よく観察すると、赤い水を吹き出し、成熟した子実層が子実体の上にも多数形成しています。これを見て自身の疑問がやっと解決しました。
ニクウチワタケと検索してみると、いわゆるきのこらしいきれいな形の写真がヒットします。これでは、自身が見た小さな個体がニクウチワタケとは判断できませんでした。
また、最近では、赤い水を出すニクウチワタケは、Hydnellum peckiiに見た目が似ていることが知られるようになり、赤い水を出す個体の写真もヒットするようになりました。
このニクウチワタケは、純粋培養をした寒天培地上においても子実層を形成し赤い水を出すことがあります。それを自分の目で観察できた時には、非常に感動しました。
また、Mycobankという菌類最大のデーターベースで、本種について検索したところ、さまざまな生育段階の本種の写真と共に、シャーレで培養したコロニーの写真が記載されています。
私にとっては、培養所見からもきのこの同定をすることができるという事を知ることができた想い出のきのこの一つです。
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