原木舞茸ってこうやって栽培してるの?!丹波山倶楽部さんにお伺いしてきました

近所のスーパーや八百屋さんで気軽に買う事が出来る舞茸

風味が強く天ぷらや炊き込みご飯にするととっても美味しいですよね!

 

昔、舞茸は天然ではなかなか見つけられない希少なきのこでした。

だから苦労の末に舞茸を見つけた人々は喜びのあまり舞い踊ってしまったそうな。

これが『舞茸』の名前の由来と言われています。

(もう一つ『まいたけの形状が舞い踊っているように見えるから』という説もあります)

 

そんな舞茸が安価にいつでも購入出来るようになったのは菌床栽培という技術が発達したおかげ。

今では季節を問わず安定して大量の舞茸を生産・販売することが出来ます。

私たち消費者にとってありがたいことですよね。

 

その一方で、1年間のうち秋の3週間しか収穫できない希少な原木舞茸というものもあります。

丹波山倶楽部さんの原木舞茸

 

今回はその原木舞茸の生産現場を視察するために、多摩川の上流にある山里、山梨県の丹波山村(たばやまむら)にお伺いしてきました。

 

目次

舞茸には菌床栽培品と原木栽培品がある

まずは菌床栽培と原木栽培について簡単に触れておきましょう。

木材などから栄養を得ているきのこ(木材腐朽菌)には、主に2種類の栽培方法があります。

原木栽培 木を伐採し、適度な長さに伐ったホダ木にきのこの菌を打ち込み栽培する方法。
露地で栽培する場合は天候や気候の影響を受けやすい。
菌床栽培 オガクズやトウモロコシ芯の粉末などを元に米ぬかや豆かすなどの栄養分を添加した菌床(きんしょう)にきのこの菌を打ち込み栽培する方法。
作業を効率化しやすく、また栽培期間を短縮し安定した収穫が期待出来る。
舞茸栽培の大手企業、ホクトさんや雪国まいたけさんは菌床栽培。

 

舞茸の菌床栽培

舞茸の菌床栽培

 

原木栽培と言えば椎茸を思い浮かべる人も多いかもしれませんね。

山林などに行くと時々丸太が組んであるのを見かけることがありますが、あれが椎茸の原木栽培の圃場です。

原木椎茸栽培の様子

この光景、好きなんですよね~

 

しかし、こういった原木栽培はどんどん減りつつあるのが現状です。

 

原木栽培が減っている背景

原木栽培が減ってきている理由は

  • 木を伐ったり移動したりするのが重労働である
  • きのこが発生するまでの期間が長くかかる、つまり収益化が遅い(1~2年)
  • 大量生産には向かない
  • 原木の入手が昔より難しくなってきている(伐り手がいない)

等があげられます。

そのため、原木栽培から菌床栽培に切り替える農家さんも多いんです。

それでも原木椎茸栽培はまだ一定数は専業で続けられている農家さんがいて、スーパーなどでも原木椎茸を見かけることが出来ますよね。

それは原木椎茸はほぼ一年を通して収穫・販売できるという点が大きいと思うんです。

一方、舞茸の原木栽培は収穫時期が1年のうちの約3週間しかないため椎茸以上に収益化するのが難しく、今大変希少な存在となってきています。

 

丹波山倶楽部さんにお伺いしてきた

ある日、関東きのこの会でレシピを発信しているきのこ料理研究家のまんぼママからこんなメッセージが届きました。

原木舞茸を栽培している丹波山倶楽部さんってご存知?
先日お知り合いになって今度お伺いしようと思っているんだけどご一緒しますか?

はい、ぜひに!!

という事でまんぼママにひっついて、前職のきのこ問屋を退職して以来、久々の産地視察に行ってまいりました!

 

丹波山倶楽部さんとは

希少な原木舞茸の栽培に挑んでいるのは山梨県丹波山村(”たんば”では無く”たばやま”むら)の丹波山倶楽部さんです。

 

≪丹波山倶楽部さんの公式HP≫

 

原木舞茸栽培だけでなく、川下りのガイドや加工品製造など、様々なことに取り組まれているようですよ。

多摩川源流の山梨県丹波山村を拠点に会社運営を行っている農事組合法人 丹波山倶楽部です。

過疎化の進む地元を元気に!!そして未来へと繋げたいとの郷土愛を会社理念に『地元』丹波山に根付いた会社運営を目指し日々、奮闘しております。

在来種の栽培にこだわった農業をはじめ、団体様向けの山岳・リバーガイドやキャンプのコーディネート等を行っております。

丹波山倶楽部公式FBページから引用)

 

当日は3人のメンバーが対応してくださいました。

丹波山倶楽部の皆様

左から青栁代表、酒井さん、望月さん

代表の青栁 雄大さんは露木と同じ1982年生まれ。

昔ながらの原木舞茸栽培をされているという事で、ずっと年上の方たちかと思っていたのに、若い3人が出てきて正直ビックリしました!

丹波山倶楽部さんの事務所や圃場でいろいろなお話をお伺いさせていただきました。

 

原木舞茸の栽培手順

まずは原木舞茸の栽培手順について教えていただきました。

  1. 原木の調達・・・11~12月頃、木を購入したり自分たちで伐採する
  2. 原木の殺菌・・・原木を栽培袋に入れ高熱釜で殺菌し無菌状態する
  3. 植菌・・・舞茸の菌を砕いて原木にふりかける
  4. 培養・・・施設内に置き、原木の中に菌糸を張り巡らせる
  5. 伏せ込み・・・6月頃、栽培袋から取り出した原木を畑の中に埋め、保湿のために上に落ち葉をかけておく
  6. 発生・・・10~11月頃、舞茸が発生する
  7. 収穫・・・適度な大きさになったら収穫する

 

一度伏せ込んだ原木からは5年くらい舞茸が発生し続けるそうです。

私、きのこ問屋の営業マン時代に原木椎茸の生産者さんの所には何度もお伺いしていたので割と栽培方法については知っている方だと思いますが、原木舞茸の栽培方法はそれとも全然違っています。

原木栽培の様子

原木舞茸の伏せ込み

 

例えば原木椎茸はホダ木の殺菌工程はありませんし、多くの場合培養も露地で行っていました。

また、椎茸は土の中に埋めずに発生させています。

菌糸の活着方法も異なっていて、椎茸はコルクなどの木片に菌糸を張り巡らせた”種コマ”を原木に打ち込むのが一般的ですが、舞茸は上から降りかけるスタイル。

どちらも原木栽培ですが、全く別物と言っていいでしょう。

おそらく椎茸菌より舞茸菌の方が雑菌や乾燥に弱くデリケートなんだろうなと感じました。

 

原木舞茸の発生期間はごく短い

原木舞茸は1年のうち、約3週間の間しか発生しないのだそうです。

考えてみてください。

11月に木を伐るのが栽培のスタートだとすると、収穫出来るまで約1年がかりということになります。

当然舞茸を収穫して販売するまでは一切収益にならないため、これを専業にするにはかなり大変だという事が想像できますよね。

更に露地で栽培しているため気候の影響などもモロに受けてしまい、発生期間や収量は簡単にずれてしまうそう。

実際、2020年の発生は例年に比べてとても遅かったそうです。

 

原木舞茸栽培の様子

最後に原木舞茸の栽培現場を見せていただきました。

おおー舞茸が出ている!!

原木舞茸

 

天然ではスダジイやナラなどの老木の根元から生える舞茸ですが、ここでは土から生えています。
(正確には土に埋め込んだ原木から)

露木がお伺いした時はまだ出始めでしたが、もっとずっと大きくなるそうですよ。

原木舞茸

まんぼママも『すごい!すごい!』としきりに感動していました。

 

まいたけオーナー制度!

丹波山倶楽部さんでは毎年まいたけオーナーを募集しているそうです。

オーナーになると約1㎡の自分の区画が与えられ、そこに舞茸菌を仕込んだ原木が15本埋められます。

そして、3年の間に自分の区画から発生した原木舞茸は全てオーナーの物になるシステム。

4年目以降も発生する可能性もありますが、だんだん原木の力が弱くなって小さい株しか出なかったり発生しにくくなるため3年で区切っているとのことでした。

舞茸が発生したら電話で連絡を頂けて、自分で収穫しに行っても良し、行けない場合は丹波山倶楽部さんが代行して収穫して発送してくれるそうです。

料金は3年間で22,000円(税込み)

毎年採れたての原木舞茸が食べられるなんて素敵ですよね!

来年、関東きのこの会で一区画申し込んでみようかな・・・記事にできるし(笑)

みんなに相談してみます。

 

追記:無事、まいたけオーナーになりました!

 

原木舞茸ってこうやって栽培してるの?!まとめ

という事で今回は原木舞茸の栽培現場を視察してきました。

ご対応いただいた丹波山倶楽部の皆様、ありがとうございました。

今回のまとめです。

  • 原木舞茸は一年間のうち秋の約3週間しか収穫できず、生産者さんも少ないため大変希少な存在
  • 原木舞茸は原木を殺菌して舞茸菌を植菌・培養後、畑に伏せ込んで栽培する
  • 丹波山倶楽部さんでは舞茸オーナー制度を運用している

 

尚、丹波山倶楽部さんは乾燥舞茸舞茸香油など、原木舞茸の加工品も製造されています。

まんぼママがそれらを使った炊き込みご飯のレシピを公開しているのでぜひチェックしてみてくださいね。

 

また、原木舞茸の発生が見込める9月下旬頃、舞茸祭りなるイベントを開催しているらしいです!!

何それ、超楽しそう!!

 

2020年はコロナの影響でドライブスルー販売のみとなってしまったそうですが、例年だと舞茸を使った料理の販売やコンサートなどがあり、かなり盛り上がっているそうですよ。

来年は関東きのこの会としても何らかの形でイベントに参加できないか模索したいと思います。

丹波山倶楽部さんは引き出しが多くて今回の訪問だけではとてもその魅力を伝えきれなかったので、また機を見て取材に行ってきますね!

続報をお待ち下さい。

 

おまけ:自宅で原木舞茸を栽培してみた!

実は、以前(7年前)自分の家でも原木舞茸栽培に挑戦してみたことがあります。

ネット通販で舞茸菌糸が回った状態の原木を5本(だったかな)購入し、7月頃に家の畑に伏せ込みました。

原木は間隔を開けずに詰めて埋めます(その方が大きい舞茸が出来るんだそうな)。

家の畑は日陰が無いのでトンネル型に寒冷紗を掛け、さらに稲ワラを敷いておきました。

自宅で原木舞茸栽培

 

そのまま放置する事3か月。

10月頃見事に原木舞茸を収穫出来ました!

自宅で原木舞茸栽培

 

収穫したまいたけと我が家のアイドル。

子供の顔よりまいたけの方がでかい!

露木の子供と原木舞茸

(この子も来年中学生)

露地栽培の舞茸は持つとずっしり重い。

密度が濃い感じがします。

また市販の舞茸より少し固めの感触で、ヒラヒラしていません。

そして、やっぱり露地舞茸は香りが非常に良いですね!

茹でる前から良い香りが漂っていて、とても美味しかったのを今でも覚えています。

しかし、収穫できたのはその年だけで以降は全く生えてきませんでした。

おそらく日が照る畑だったので、土中の原木が乾燥してしまったのだと思います。

丹波山倶楽部さんは5年は採れると言っていたので、この辺がプロと素人の違いですね。

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この記事を書いた人

露木 啓(つゆきのこ)のアバター 露木 啓(つゆきのこ) 関東きのこの会 代表

『“キノコ”といったら露木までっ!』
元きのこ問屋の営業マン。
生産者さんからきのこを仕入れ、主に関東のレストランや生協さん、自然食品さんに卸す仕事をしていました。
また『きのこのじかん』という情報発信サイトできのこ記事も書いていました。
今は職業きのこから離れ、趣味としてきのこと付き合っています。
主に土日に散策してきのこを撮ったり。
また、きのこの歌を作詞作曲し歌っています。

・ベーシックきのこマイスター
・ヨコハマきのこ大祭実行委員

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