食卓に長期保存でき、風味豊かな出汁がとれる乾燥椎茸は、昔から煮物の具材や汁物に重宝されてきました。
実は、椎茸の持つ旨味成分『グアニル酸』は、昆布のグルタミン酸やかつお節のイノシン酸と並んで三大うま味成分に数えられるほど上質なものなんです。
しかし、それだけのポテンシャルを秘めている乾燥椎茸といえども、誤った戻し方をしていると美味しさも香りも半減してしまいます。
乾燥椎茸には、『美味しい戻し方』というものがあるのです。
そこで今回は、乾燥椎茸の美味しさを一番引き出せる戻し方と、どうしても早く戻したい時のために、手早く戻す事が出来る裏ワザを紹介いたします。
この機会に覚えていただき、椎茸本来の上質な風味をお楽しみください!
美味しく戻すには:冷蔵庫内で5~10時間かけてじっくり戻す
手早く戻すには:1時間程戻してスライスしてから、更に30分戻す
乾燥椎茸の美味しい戻し方
乾燥椎茸を美味しく戻すポイントは2つあります。
- 冷水で戻す
- 時間をかけて戻す
1.冷水で戻す
昔から、乾燥椎茸は『冷水で戻した方が美味しい』と言われてきました。
これには根拠があります。
椎茸の旨味成分はグアニル酸と言い、戻しに使う水の温度によって生成される量が変わることが分かっているんです。
乾燥椎茸を戻してから加熱した後のグアニル酸量は、温水戻しでは0.5mgだったのに対し、常温水では20mg、冷水では160mgも生成されていました。
つまり冷水で戻すと、温水で戻した時に比べなんと320倍も多い旨味成分が生成されるのです。
この場合の冷水とはだいたい5℃を指し、冷蔵庫内で戻すことでちょうどこのくらいの水温を保つことが出来ます。
2.時間をかけてじっくり戻す
乾燥椎茸は戻し時間が短いと歯応えが悪くなり、ボソボソします。
また旨味成分のグアニル酸が生成されないため美味しくなりません。
じっくり時間をかけて戻しましょう。
尚、戻し時間は椎茸の厚みによって異なります。
どんこ等の肉厚な椎茸は10時間以上、薄い椎茸は5時間以上が目安です。
よく『冷蔵庫の中で一晩かけて戻すと美味しい』と言いますが、この認識でOK!
20時に冷蔵庫に入れておけば朝6時でちょうど10時間ですから、肉厚椎茸の戻し時間目安とぴったりです。
乾燥椎茸を美味しく戻す手順
冷水で戻す、時間をかけて戻すという2つのポイントを踏まえて、乾燥椎茸を美味しく戻す手順はこちら。
- 乾燥椎茸をさっと流水で洗いほこりや汚れなどを落とす
- 袋や容器に乾燥椎茸を入れ、ひたひたになるくらいまで水を入れる
- 容器ごと冷蔵庫に入れ、椎茸の厚みに応じて5~10時間かけてじっくり戻す
※戻し汁を料理に使うときは水を多めに入れて下さい。
乾燥椎茸の美味しい戻し方を動画にまとめました。
併せてご覧ください。
乾燥椎茸を手早く戻す裏ワザ
乾燥椎茸は、冷水で5~10時間かけてじっくり戻すと美味しい・・・
とはいっても、どうしてもすぐ使いたい時もあるでしょう。
そんな時に活用できる乾燥椎茸を手早く戻す裏ワザを一つ紹介いたします。
乾燥椎茸を短時間で戻す手順
- 乾燥椎茸をさっと流水で洗いほこりや汚れなどを落とす
- 袋や容器に乾燥椎茸を入れ、ひたひたになるくらいまで水を入れる
- 冷蔵庫に入れ1時間程度戻す
- 一度椎茸を取り出し、軸を切り落としカサをスライスする
- 水の中に戻し冷蔵庫で再度30分程度戻す
椎茸をスライスすることで水と接する部分が多くなるため、通常より短い時間で戻す事が出来る裏ワザです。
乾燥椎茸のままでは固くて包丁で切れないため、1時間程度戻し軟らかくしてからスライスします。
尚、切りとった軸も食べられますので、どうぞ捨てずに料理にご利用ください。
ただ、『美味しい戻し方』と比べるとどうしても味は落ちてしまいますので、時間があるときは、やはり『5℃の冷水でじっくり戻す』方法をおすすめします。
椎茸は乾燥させた方が旨味や栄養が摂りやすくなる
椎茸は生鮮の状態より、乾燥させたものの方がより旨味が出るってご存知でしたか?
椎茸の旨味の多くは固い細胞壁の中に閉じ込められているため、そのまま調理してもなかなか外に出られません。
しかし、椎茸を乾燥させることで細胞壁にヒビが入り壊れやすくなるため、中に閉じ込められていた旨味が溶けだしやすくなるんです。
また旨味だけでなく、同様に閉じ込められていた栄養も一緒に溶けだしているはずです。
椎茸の持つ栄養成分の一つにエリタデニンがあります。
栽培されているきのこの中でも、椎茸とマッシュルームからしか見つかっていない成分で、血中のコレステロール量を調整して動脈硬化を予防する効果が期待されています。
出汁や栄養をしっかり摂りたいと考えている場合は、乾燥椎茸の利用がおすすめです。
椎茸の持つ栄養については、こちらの記事で紹介しています↓
乾燥椎茸の保存方法
乾燥椎茸を美味しく食べるには保管の仕方も重要です。
乾燥椎茸の最大の敵は 『湿気』
しっかり密閉しておかないと、すぐ湿気ってしまい風味が悪くなります。
最悪の場合カビが発生することも!
そこで原木椎茸の生産者さんに教えてもらった、おすすめの保存方法を紹介いたします。
乾燥椎茸の冷蔵保存法
- 密閉できるチャック袋や容器に乾燥椎茸を入れる
- 冷蔵庫で保存する
※乾燥剤や脱酸素剤が入っていたら一緒にいれておく。
冷蔵庫内は乾燥しているため、実は乾物の保存に適しています。
この方法で、乾燥椎茸を数カ月~1年位保存しておくことが可能です。
ただ、せっかくの美味しくて体にも良い食材ですので、冷蔵庫に入れっぱなしにしないでどんどん使いましょう。
乾燥椎茸の旨味成分グアニル酸は三大うま味成分の一つ
椎茸の旨味成分グアニル酸は、昆布の「グルタミン酸」、かつお節の「イノシン酸」と並んで三大うま味成分の一つに数えられています。
そう、実は椎茸はトップ3に入る旨味成分を持っているのです!
そのため、乾燥椎茸は昔から煮物や出汁として利用されてきました。
椎茸の煮物、本当に美味しいですよね。
尚、三大うま味成分は、単体より複数組み合わせて調理に利用した方が美味しいとされ、これを旨味の相乗効果と言います。
特にグアニル酸はグルタミン酸と相性が良く、昆布と乾燥椎茸を合わせると非常に上質で美味しい最強のダシがとれます。
日本で流通する乾燥椎茸はほとんど原木栽培品
日本で流通している国産乾燥椎茸の約9割は、原木栽培で育てた椎茸を熱風乾燥したものです。
乾燥品 | |
---|---|
菌床椎茸 | 254.8t (約11%) |
原木椎茸 | 2159.4t (約89%) |
合計 | 2414.4t |
2019年調査データ|e-Stat政府統計の総合窓口 特用林産物生産統計調査から抜粋
ただ、近年は菌床栽培した椎茸の乾燥品も増えてきているので、両者の違いを食べ比べてみるのも面白いかもしれません。
JAS法により『菌床』栽培か『原木』栽培かを記載する義務があるため、パッケージや一括表示で確認できるはずです。
露木の感覚では、菌床椎茸の乾燥品の方が水分が多かったからかフカフカ柔らかめで、原木椎茸の乾燥品はがっしりしている気がします(思い込みかも・・・)。
もちろん季節や品種、栽培環境や椎茸自体の個体差によっても変わるので一概には言えませんが。
スーパーや百貨店に行ってみると、菌床・原木の違いだけでなく、いろいろな形・厚みの乾燥椎茸が販売されています。
ぜひ、自分好みの乾燥椎茸を見つけてご利用ください。
原木栽培と菌床栽培の違いについて詳しくはこちら↓
まとめ
乾燥椎茸の美味しい戻し方と、時間が無い時に手早く戻せる裏ワザを紹介しました。
今回のまとめです。
- 乾燥椎茸をさっと流水で洗いほこりや汚れなどを落とす
- 袋や容器に乾燥椎茸を入れ、ひたひたになるくらいまで水を入れる
- 容器ごと冷蔵庫に入れ、椎茸の厚みに応じて5~10時間かけてじっくり戻す
- 乾燥椎茸をさっと流水で洗いほこりや汚れなどを落とす
- 袋や容器に乾燥椎茸を入れ、ひたひたになるくらいまで水を入れる
- 冷蔵庫に入れ1時間程度戻す
- 一度椎茸を取り出し、軸を切り落としカサをスライスする
- 水の中に戻し冷蔵庫で再度30分程度戻す
正しく戻して、椎茸の上質な旨味をお楽しみください。
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