シイタケは平凡なきのこである。
知名度はおそらく100%。
全国のスーパーに必ず置いてあり、煮ても焼いても炒めても、生でも干しても冷凍でも(食べる時は火を通さないとダメよ。シイタケ皮膚炎になるからね)どんな料理にも合うオールマイティーさを誇る食菌の中の食菌。
日本人にとって、いわば普通of普通のザ・きのこである。
シイタケは特殊なきのこである。
まずこの見た目。
鱗片を載せた茶色の傘はまんじゅう型にして縁は内に巻き、フウセンタケ属でもないのに繊維質のツバ。
ささくれ立った、というよりフサフサと毛皮のような柄。
モエギタケとか結構似ているなあと思うけどあれ青いしな。
そして好き嫌いをはっきり分ける独特なレンチオニンの強い香り。
豊富なグアニル酸の旨味。こんなきのこ他に無いよ!
シイタケの学名は「Lentinula edodes」だが、そもそもLentinula属のきのこが日本にはこのシイタケだけなのだ。
その平凡にして特殊なシイタケを、平凡にして特殊な調理法で食してみよう。
作るのは、なんのことはない、焼きしいたけである。
まず用意するのは手のひらほどの平たい石。
この(入手が難しいと思われる)石をオーブンでカンカンに熱するのである。
そうして熱した石を慎重に、程良い木製の台に置き、その上に柄を切ったシイタケ(新鮮で、ヒダにサビのような染みが生じていないものがいいだろう)を裏返して載せる。
この時シイタケは、肉のようにジュワーといやらしい音は立てない。
ただ静かにシリシリと焼けていくさまを見て焦げ具合に思いを馳せ、待つのである。
シリシリ。
シリシリ。
視界が歪むのは石の熱気か専心の末の幻覚か。
シリシリ。
シリシリ。
しばらくして少し縮んだシイタケは、ヒダのところに玉のような「汗」をかき始める。
この汗に旨みが詰まっているので、大事に大事にこぼさぬように、醤油をひとたらしして、傘の縁からがぶり。
さあ今こそこの回文を唱えよう。
「よく焼けた石でシイタケ焼くよ」
(よくやけたいしでしいたけやくよ)
美味しく食べられて良かったね。
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