私たちがスーパーなどでよく目にするキノコ達には、カサがあるものが多いですよね。
シイタケ、ブナシメジ、マッシュルームなどなど。
エノキにも小さいですが、ちゃんと一つ一つにカサが付いています。
これらのキノコのカサは、なぜ付いているのでしょうか。
A:胞子を遠くへ飛ばすためです!
ということで、今回は『キノコの多様な胞子の撒き方』についてご紹介いたします。
それにはまず、キノコはそもそも何者なのか?という事から解説していきましょう。
キノコは菌類です
その昔、植物界と動物界の二界だけに分けられていた時代、キノコは植物側に分類されていました。
光合成が出来ない下等な植物だと思われていたんです。
ところが、研究が進むにつれて、明らかに植物とは異なる点が多く見つかってきて、新たに菌類に分類されるようになりました。
そうです、キノコはカビや納豆菌と同じ菌類なのです。
目に見える大きさの子実体を作る菌類を特別に”キノコ”と呼ぶ
でもカビや納豆菌と、シイタケやマッシュルームでは、まったく別物に見えてしまいますよね。
実は、この両者はある特徴によって分けられています。
ポイントは2つ。
- 胞子を撒くための器官『子実体(しじつたい)』を作るかどうか
- 子実体が肉眼で見える大きさかどうか
私たちが普段食べるここ、いわゆる『シイタケ』と呼んでいる部分全体が、キノコの子実体です。
このように、人間の目で見える大きさの子実体を作る菌類を特別にキノコと呼んでいるのです。
キノコの子実体の形状は多種多様。
そして、キノコの胞子の撒き方も多種多様で、とっても面白いんです。
それでは、色々なキノコの胞子の撒き方を見ていきましょう。
カサを持つキノコの胞子の撒き方
こちらは皆様よくご存知のシイタケです。
軸があり、カサがあり、カサの裏側はヒダになっています。
こういったカサを持つキノコ達は、どのように胞子を飛ばすのでしょうか?
栽培キットで育てたシイタケを使って、胞子を撒く様子を観察してみました。
動画の通り、シイタケはカサの裏側から胞子を出し、風に乗せて遠くまで運ぶんです。
カサを持つ他のキノコも、だいたい同じような方法で胞子を飛ばしています。
ドアを閉め切った室内で撮影しましたが、ほぼ無風でもいろんな方向に胞子が飛んでいく様子が確認できました。
キノコのカサは胞子を遠くに飛ばすためにある
シイタケのカサは、下側が平らで上側が丸く盛り上がったドームのような形をしています。
他にも、似たような形のカサを持つキノコは多いですよね。
実は、この形は単にかわいいだけでなく、胞子を遠くに飛ばすための機能を備えているんです。
キノコに風が当たると、カサの上側を通る空気は曲面に沿って速く進み、平らな下側を通る空気は遅く進みます。
その速度の差から、下から上へ持ち上げるような揚力が生まれます。
カサを持つキノコのほとんどはカサの裏側から胞子を出すため、揚力による上昇気流に乗って、より遠くまで胞子を飛ばすことが出来るというわけなんです。
ちなみに、飛行機の翼も同じ理論で揚力を生み出しているそう。
また、露木の個人的意見ですが、ほぼ無風の室内でも胞子は遠くまで飛ぶことから、胞子自体が微風にも乗りやすい構造をしているんだと思います。
より効率よく自分の子孫を残すため、キノコはとても機能的なカサや胞子を持っているんですね!
カサを持たないキノコの胞子の撒き方
キノコの中にはカサを持たないものもいます。
例えばこれらのキノコ達です。
- マイタケ
- アラゲキクラゲ
- クチベニタケ
- ツチグリ
- ホコリタケ
- ノウタケ
- ササクレヒトヨタケ
- スッポンタケ
- キヌガサタケ
こういったキノコ達はどうやって胞子を運んでいるのでしょうか。
いくつかのキノコで、実際に胞子を飛ばして確認してみました。
穴から胞子を吹き出すタイプ:ホコリタケなど
丸い子実体を持つキノコ達は、刺激を受けることで穴から胞子を吹き出します。
ホコリタケ・ツチグリ・クチベニタケを観察してみました。
ご覧の通り、指で突いたり押したりすると、てっぺんの穴から胞子を噴出します。楽しいです。
自然界では刺激を与える指は無いですが、雨などによって胞子を飛ばしていると考えられます。
ちなみに、最後のクチベニタケは、地面から引っこ抜くとエイリアンみたいなたこ足が出てきます。機会があったら観察してみて下さい。
全身から胞子を吹き出すタイプ:ノウタケなど
これはノウタケというキノコです。
人間の脳の様な形をしているからノウタケ(脳茸)。
森の中に落っこちているパンにも見え、手触りも割った感触も本物のパンみたいです。
ノウタケは、老菌になっても腐らずに乾いたスポンジのような状態になり、物理的刺激を与えると全身から黄色っぽい胞子を吹き出します。
先日、近所の公園に老菌が生えていたので、子供と一緒にポフポフ胞子を撒くお手伝いをしてきました。
余談ですが、このノウタケ、若い物は食用になります。
先日たくさん見つけたので採取してきました。
割ってみて中身が白っぽければOK!
逆に黄色~褐色になってきた物はもう食べられません。
自分を溶かして胞子を地面に落とすタイプ:ササクレヒトヨタケなど
これはササクレヒトヨタケというキノコです。
成菌(大人)になると自己分解酵素を出して一晩で溶けてしまう事から、ヒトヨタケ(一夜茸)という名前が付いています。
美味しい食菌でもあり、日本で栽培もされていて、コプリーヌという商品名で販売されています。
このササクレヒトヨタケの胞子の撒き方もかなり独特です!
成菌になって溶けていく様子をタイムラプス動画で撮影しました。
このドロドロに溶けた黒い液体に胞子が含まれていて、それを地面に落とす事で子孫を残していきます。
何とも不思議なキノコ。
ちなみにこの溶けた黒い液体でお絵描きや習字をする事も出来ます。
臭いで虫をおびき寄せて胞子を運んでもらうタイプ:スッポンタケなど
これはスッポンタケと言うキノコ。
数年前に露木の家の畑に生えていました。
言うまでもなく、スッポンの頭の形状に似ているからスッポンタケです。
このキノコの先端についている黒い部分は、カサでは無くグレバという器官です。
グレバには胞子を含んだ液体が付着していて、強い臭い(結構悪臭!)を放っています。
この臭いでハエなどの虫を誘い、胞子を運んでもらうという、これまた一風変わったキノコなのです。
他にもキヌガサタケやキツネノタイマツなどがグレバを持つキノコで、スッポンタケと同様に虫に胞子を運んでもらうことで、子孫を残しています。
まとめ
- キノコは菌類で、胞子を拡散するために子実体を作る
- キノコにカサがあるのは、より遠くまで胞子を飛ばすため
- キノコの形状により胞子の撒き方も多種多様
余談、スッポンタケ食べてみた
せっかく家の畑に生えた事だし、これも経験だと言う事でスッポンタケを食べてみることにしました。
まずは臭いの元であるグレバに付着した液体をしっかり洗い流します。
水で洗うとグレバの白い部分が見えてきました。
胞子の液体が黒いのであってグレバ本体は白いんですね。
臭みを消すために沸騰したお湯で茹でていきます。
おおぅ、湯気が臭い。
湯通ししたお湯を捨て、新しい水で煮込みます。
中華ダシを使い簡単中華スープにしてみました。
湯通ししている事もあり、旨味はあまり強くないですが軸はシャクシャクした食感でなかなか美味しいです。
次にグレバ部分もいってみます。
恐る恐るひと噛み。
う、臭い!これはきつい・・・
湯通ししてだいぶ香りは和らいだと思っていたのですが、噛むと臭みが鼻に抜けていきます。
グレバ部分は食べるのをあきらめてしまいました。
軸は独特の食感で美味しいので、次回スッポンタケを見つけたら軸だけ調理するようにしようと思います。
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