先日、吉祥寺で開催された『きのこ盆栽』の個展にお伺いしてきました。
きのこ盆栽は天然に生えているきのこを鉢などに移し替え、形よく栽培して盆栽にした物・・・ではありません。
きのこ盆栽は、粘土でつくられたきのこ造形作品なんです!
とてもリアルな出来で一見しただけでは本物のきのこと間違えてしまう完成度。
それぞれのきのこの特徴がしっかり捉えられています。
これだけリアルな粘土製きのこ、いったいどんな人が作っていると思いますか?
ということで今記事では露木の菌友でもある”きのこ盆栽家”渋谷 卓人さんときのこ盆栽について、たっぷり紹介いたします。
きのこ盆栽家 渋谷 卓人さん
きのこ盆栽を制作している渋谷 卓人さんは32歳(記事公開時)の会社員。
今回お伺いした個展『粘土で見るきのこの魅力展』の主催者で、きのこ盆栽の書籍も書いているきのこ盆栽の発案者です。
きのこを作品の題材に選ぶくらいかなりのきのこ好きで、時間のある時はよくきのこ散策に行くそうです。
露木も渋谷さんのきのこ散策にご一緒させていただくことがあるのですが、多種類のきのこの名前と特徴が頭に叩き込まれていて歩くきのこ図鑑!という感じ。
自分が知らないきのこの事も教えてもらえて、とてもありがたいです。
≪きのこと冬虫夏草を探しに行った時の様子≫
そんな渋谷さんがきのこの魅力にはまったのは幼稚園の頃。
図鑑で見たスッポンタケがたまたま近くの公園に生えていて、とてもびっくりしたのがきっかけだったそうです。
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珍しい形のきのこに出会ったらドキドキしますもんね。
多感な時期にそんな出会いがあったら・・・ハマってしまうのはわかる気がします。
そんな渋谷さんのきのこ散策以外の趣味は”盆栽いじり”と”御朱印旅”だそう。
この歳にしてなかなか渋め?!
Twitter:渋谷卓人 (@kinoko_bonsai) | Twitter
きのこ盆栽を作り始めたきっかけ
森で出会うきのこは色彩がきれいだったり形が可愛かったり、出来ることならいつまでもそのままの形で残しておきたいと常々思います。
しかしほとんどのきのこは儚く、持ち帰ったとしても数日で腐ってしまい観賞用として維持することは出来ません。
『何とかきのこの魅力を永続的、立体的に残すことはできないか』
そう考えた渋谷さんは趣味の盆栽にヒントを得て、粘土でリアルなきのこ模型を作り盆栽に見たてて鉢に植える『きのこ盆栽』を思いついたそうです。
なるほど。
根底に”天然に存在するきのこの魅力を立体的に残したい”という想いがあるから、渋谷さんの作品は本物に近づけてリアルに作られているんですね。
きのこ盆栽ギャラリー
それでは、個展『粘土で見るきのこの魅力展』で展示されていたきのこ盆栽達を何点かご紹介します。
アカモミタケ
モミの木の近くに生える赤っぽいきのこだからアカモミタケ、美味しいきのこです。
本物そっくり!
≪昨年の秋に見つけた天然のアカモミタケ≫
ブナシメジ
市販のブナシメジといえば1株数十本のかたまりで生えていますが、天然ものはきのこ盆栽のように数本で生えてくることが多いです。
カサの大理石模様が特徴でよく再現されています。
カンムリタケ
露木が見てみたいきのこカンムリタケは湿地などに群生する小さいきのこです。
関東ではあまり生えないらしく、いつも西の菌友たちがSNSにアップする写真を羨ましく見ていました。
きのこ盆栽で見ることが出来ました✨
コーラの空き缶から生えるニガクリタケ
割と見かける機会は多いですが、死亡例もあるくらい危ない毒キノコ。
(でも群生していて見た目は可愛い)
自然界ではあり得ないですがコーラの空き缶から生えていました。
こんなユニークなことができるのもきのこ盆栽ならでは!
トラックの荷台から生えるササクレヒトヨタケ
もう一つきのこ盆栽ならではの作品を。
ササクレヒトヨタケは一夜茸の名が示す通り、成菌になると自己分解酵素を出し一晩で溶けてしまう儚いきのこ。
そのササクレヒトヨタケがトラックのプラモデルから生えています!
これも自然界ではありえないですが、なぜか”リアル”に見えるから不思議・・・
これがきのこ盆栽家 渋谷さんの技ですね!
ちなみにササクレヒトヨタケは幼菌時なら食用に出来、コプリーヌという商品名で栽培品が売られていることもあります。
とっても美味しいきのこなので見つけたらぜひ食べてみてください。
≪コプリーヌ≫
きのこ盆栽の作り方
もうだいぶ前のことですが、渋谷さんのアトリエに潜入しきのこ盆栽の制作現場を拝見させて頂いたことがあります。
せっかくなので制作風景の一部をご紹介します。
≪きのこのカサ部分を作っているところ≫
手早いスピードで粘土をこねて形を整えていきます。
粘土が固まる前にある程度形を決めヒダ(傘の裏側)まで作らなければならない為、スピード勝負なのだそうです。
≪カサ裏のヒダを作っているところ≫
『ヒダは楊枝で作ると線が太くなりすぎてリアルさにかけてしまうので、デザインナイフを使っています』
とのこと。
きのこ盆栽は練って⇒乾かして⇒色を塗って⇒乾かして、と乾燥の手順を挟む必要があるので一つの作品に数日かかることもあるそうです。
渋谷さんの著書『きのこ盆栽』には詳細な作り方が載っています。
きのこ盆栽作りに挑戦したい方はぜひ一読してみて下さい。
きのこ図鑑として読んでも面白いですよ!
書籍 『きのこ盆栽』 |出版元 築地書館株式会社
きのこ盆栽家 渋谷卓人さんの個展に行ってきました、のまとめ
- きのこ盆栽は粘土で作るリアルな”きのこ型造形作品”
- きのこ盆栽家、渋谷 卓人さんは魅力的なきのこを立体的・永続的に残したいと考え、趣味の盆栽から発想を得て『きのこ盆栽』を作った
- 独創的な発想で”缶や模型から生えるきのこ”など、リアルでありながらユニークな作品も製作している
次の個展も楽しみです!
ちなみにこの記事を書くために写真を見返していたら、渋谷さんのアトリエにお伺いしたのは6年前でした。
結構前だったんだなぁ・・・
渋谷さんとはそれからずっと菌友です。
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