小さい時に、葉っぱを運ぶアリがいると知りとても興味を持っていました。そのアリ達は、切り取った葉っぱを巣に持ち帰りそれを元にきのこを育ててエサにしているとのこと。聞けば聞くほど不思議な話です。
そんな気になる生き物がいることもすっかり忘れて大人になった頃、神奈川県にある多摩動物園まで『ハキリアリ』の菌園を見学に行ってきました。
今から18年も前の話(2022年現在)です。
園内で展示されている巣とアクリルのケースには、びっちりと巣が張り巡らされ小さなアリが縦横無尽に動き回っていました。
驚いたことに、本当に身体と比較して何倍もある葉を小さな顎で切り取りせっせと巣に運び入れています。その後、小さく小さく切り取り、巣の中にある(菌園)にくっつけていました。
併せて他の働きアリが、白っぽい魚卵のような菌糸の塊(菌球)をせっせと貼り付けています。あまりに感動的。
不思議な光景で、数時間じっと観察をしていました。
すると、飼育員の方に声を掛けられ、そんなに興味あるならと飼育室のバックヤードを特別に案内していただきました。
飼育当初は、餌にする植物の葉の種類が分からず様々な葉を与えてみたこと。食性は広いが好みがありそうなこと。植物の種類というより、アリが葉を物理的に切り取れるか(運びやすいか否か?)がポイントらしい。ことなど、飼育に関わる日々の苦労話を聞くことができました。
なお、そもそも、自身が興味を持った、このハキリアリが育てているきのこはなんという種類なのだろう…?
これについては、すでに様々な研究報告がなされ、(Leucoagaricus gongylophorus)などのきのこの菌糸体を育てていることも知りました。
このLeucoagaricus属には、コガネキヌカラカサタケ(Leucocoprinus birnbaumii)という有名なきのこのがあります。観葉植物の植木鉢やプランターなどの腐植質のある園芸用土から発生することがあり、何かと「なんというきのこ?」という質問によく上がるきのこの一つです。
私のところにも頻繁に質問が届きます。
コガネキヌカラカサタケについて、詳しくはこちら↓
実は、このコガネキヌカラカサタケも、培養した菌糸を観察してみると、多量の黄色を菌球を培養菌糸上に形成します。まるで、数の子やシシャモorカペリンのような魚卵状によく似た感じをしています。
この事に私自身が気が付いたときに、とても驚きました。
ハキリアリは、進化の過程でどうやってエサとなるLeucoagaricusを見つけたのか?栽培方法をどうやって見つけたのか?その方法がどうやって女王アリに知識として伝播していったのか?など何故だろう?何故かしら?と感じる疑問がたくさんあります。
なお、その後もこのハキリアリの菌園は、女王アリの世代交代が続き、2021年まで生育が続けられていたようです。ただし、ついに女王アリが死に絶えたことでいずれこの巣は消滅してしまうものと思われます。
つくづく生物の世界は、栄枯盛衰だなと考え深いものあります。
≪参考サイト≫
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