先日、新宿に出かけた際に少し時間が出来たので、新宿駅から徒歩30分くらいの位置にある大龍寺にお伺いしてきました。
というのも、『大龍寺にはシイタケを干している僧の銅像がある』と聞いたことがあったからです。
目的の銅像は本堂の左手前にありました。
全く知らなかったのですが、この銅像は曹洞宗の開祖・道元禅師が若い頃に中国(宋)に渡った際、シイタケを干す老僧と問答したシーンを表しているそうです。
一体、道元禅師はシイタケによってどんな教訓を得たのでしょうか。
俄然興味を持ったので、道元禅師や典座教訓(てんぞきょうくん)のシイタケ話について調べてみました。
新宿 起雲山大龍寺の概要
大龍寺(だいりゅうじ)は、東京都新宿区にある曹洞宗の寺院です。
本尊として釈迦牟尼佛(しゃかむにぶつ)を安置しています。
名称 | 起雲山 大龍寺 |
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住所 | 東京都新宿区原町2丁目62番地 |
アクセス | ・東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩8分 ・都営地下鉄大江戸線若松河田駅から徒歩8分 |
URL | https://blog.goo.ne.jp/kiun350 |
https://www.facebook.com/dairyuji/ |
新宿駅から歩いて30分程度でした。
※現在、御朱印の授与はされていないそうです。
本堂手前にシイタケを干す老僧と若い僧の像がある
大龍寺に着くと、ちょうど通用門のところに住職のご家族と思われる方がいて、『どうぞお参りください』と中に入れてくれました。
通用口から入って正面は駐車場で、門から右手に向かうと本堂に上がる階段やお墓があります。
目的の『シイタケを干している僧の銅像』は、本堂階段手前の左側に設置されていました。
老僧の描写がリアルでなかなか迫力があります。
像は道元禅師の典座教訓(てんぞきょうくん)の一節を示したもの
銅像の下には『天童山老典座和尚と若き日の道元禅師』と言うタイトルの石碑がはめ込まれていました。
おそらく、銅像のいわれが書かれているんだろうとは思ったのですが、読んでもいまいちピンとこず。
この写真をTwitterにアップしたら、菌友がこんな風にツイートをしてくれました。
やっぱり典座教訓の椎茸のあたり😁
#kinokole #fungi #fungus https://t.co/BEdnfmtJvi— くさびらじかる (@myco_radical) December 30, 2021
ふーむ、『典座教訓』とは何ぞや??
興味が湧いたので、後日調べてみました。
道元禅師の典座教訓(てんぞきょうくん)とは
道元は鎌倉時代初期の禅僧で、福井県にある永平寺を開き曹洞宗をひろめました。
その道元が書き記したのが『典座教訓(てんぞきょうくん)』です。
典座(てんぞ)とは、主に食事を用意する僧のことを指します。
つまりお寺の食事係で、どちらかというとこの職は日本では軽視されがちでした。
ところが、中国(宋)では食事の準備も大事な修行の一環とされていたんです。
道元禅師は若い頃宋に留学し、実際に体験した事柄から典座職の重要性を感じ、教訓に書き記しました。
その体験談の中に、干しシイタケにまつわるエピソードがあります。
『なぜこんな暑い日にシイタケを干すのですか?』
道元禅師が中国(宋)に留学し様々な地を巡って修行していた時、ある寺でこんな事がありました。
太陽がカンカンに照っている昼間に、腰の曲がった老典座が、杖をつきながら汗だくになって本堂の脇でシイタケを干していたんです。
不思議に思った道元禅師が尋ねました。
道 元『あなたはおいくつですか』
老典座『68歳だよ』
道 元『あなたのような徳の高そうな方なら、自分でシイタケを干さずとも若いお弟子さんにやらせればよいのではないですか?』
老典座『他の僧にさせたら自分の修行にならないじゃないか』
道 元『何もこんな暑い日にせずとも、せめてもう少し涼しい日にしたらよいのでは』
老典座『今せずにいつするというのだ』
このやり取りから、若い道元がシイタケを干すという仕事を軽んじていたことが感じられます。
また利発であったゆえに『何もこんな大変な日に作業せずとも、もっと涼しい日にやった方が良い』と思ったのでしょう。
それに対し、老典座はシイタケを干すことも修行と捉え、自分の手で丁寧に並べていました。
また生シイタケは日持ちしないので早く干さなければなりませんし、日が照っている時だからこそよく乾いて、美味しいダシがとれるようになります。
だから『今せずにいつやるというのだ』というわけです。
道元禅師はこの問答に大きなショックを受け、後に典座教訓に書き残しました。
数十km遠方から歩いて干しシイタケを買いに来た老典座の話
典座教訓には、もう一つシイタケにまつわるエピソードが記されています。
道元禅師が中国(宋)の港に到着し、上陸許可がおりるまで船に留まっていたときの話です。
中国のお寺の老典座が、汁物の出汁に使う干しシイタケを探して船にやってきました。
道元禅師は時間もあるし、この徳のありそうな老僧と仏法の話がしたいと思ったのですが、老典座は寺に戻って食事の準備をしなければならないからと断ります。
それに対して道元はこのように言いました。
『食事の準備などは若い僧でもできるでしょう。仏法の話より食事の準備の方が大事だというのですか』
すると老典座は大笑いし『日本の若者よ、あなたは修行とは何であるかが全くわかっていないようです』と言い残して帰ってしまったのです。
数十kmの道のりを、食事の準備をするために。
こうした宋での体験は、座禅や読経こそが修行の中心だと考えていた若かった道元に衝撃を与え、曹洞宗の教えや典座教訓に活かされました。
こちらの動画は、曹洞宗永平寺の典座職を特集したドキュメンタリーです。
干しシイタケを買いに来た老典座と道元禅師の話も紹介されていますので、お時間がありましたら併せてご覧ください。
まとめ
新宿の大龍寺には『シイタケを干す老僧と若い僧の像』があります。
道元禅師の典座教訓(てんぞきょうくん)の1シーンを表したもので、その物語を知ってから像を見ると、より記憶に残るでしょう。
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