———いいかい奥さん、今から世界一詳しく「キノコのお肉」について語るからね。ぜひ読んでくれよ。(M.Ouchi 2025)
—–「あ、これは思ったより全然お肉だ!」(筆者の感想)
新潟県南魚沼市を拠点にきのこの製造・販売をする雪国まいたけさんから、「キノコのお肉」と名付けられた新商品が2025年2月18日(火)より発売される。
「キノコのお肉」は「代替肉」として開発された、主原料をマイタケとする新しい食材である。将来到来すると言われている「タンパク質危機」対策の一助として、また低糖質・低脂質、食物繊維の多さなど、マイタケの特長を生かしたヘルシーな食材としてのメリットがあるうえ、原料は国産のマイタケなので、食料自給率への貢献も期待ができる。

先日行われた試食会に参加したが、まず意外だったのはその形である。いわゆる「謎肉」より少しだけ大きいブロック状で、表面は滑らかでツヤがある(おっと、つい癖で野生のきのこを観察するときの目線になってきた)。このブロック状のものが50g入ったレトルトパックの形で販売されると言う(それって使い切るのにちょうどいい量だし、包丁も使わなくていいやつじゃん……!)。

口に入れて、ゆっくり噛んでみる。あ、これは思ったより全然お肉だ!ハムに近い感じのクニッとした歯ごたえである。この食感が開発時のこだわりポイント(=苦労されたポイント)だそうで、他の植物系の代替肉ではひと噛み目は歯ごたえを感じられても、すぐに崩れていってしまう。しかし「キノコのお肉」では最後まで弾力が保たれた食感なのだ。
マイタケ由来の旨味も豊かだし、これは充分肉だと思って食べることができる。
ただし、「キノコのお肉」は既存の肉と「置き換えて」使うものではないらしい。記者からの「何の肉の代わりとして使えばいいのか」という質問に、株式会社雪国まいたけ社長の湯澤尚史氏は、あえて何かの肉に寄せるようには作らなかった、置き換える形ではなく新しい食材、(精肉コーナーなどではなく)青果コーナーに置いていただく、ということをおっしゃっていた。
「代替肉」というと「2×××年、核戦争によって荒廃した世界では……」みたいな状況で「しかたなく」食べるもののようなイメージがあるかもしれませんが(無いか)、「キノコのお肉」にかんしてはむしろこの食品を(新しいものとして)選んで食べるレベルになっている。こうして新しい食材が増えることによって食文化の可能性が広がるのは、供給不足が心配な他の食材を圧迫しないという点でも大きなメリットがある。そもそも「世紀末ヒャッハー世界」でも代替肉が無ければ代替肉も食べられないわけだしね。きのこにかんしては、すでに優秀な食材としてのイメージも強いし、みなさん絶対好きになりますよ、「キノコのお肉」。
これは多様性である。
生物の進化というのは、似ているようで少しずつ性質の違うたくさんの個体のうち、たまたま環境の変化に耐えられた者たちの作ってきた歴史である。全員が同じでは一つの要因で絶滅することがあっても、多様性があれば誰かしら生き残って命を繋いでいける。これは文化の多様性、人種の多様性などなど、人間の多様性についても同じであり、陳腐化した「多様性」という言葉にうんざりする向きもあるかもしれないが、多様性の確保は生き残るチャンスの確保に他ならない。
—–製品ラインナップ
多様性といえば、「キノコのお肉」は食べかたも多様な可能性がある。
まず商品ラインナップは5種類。ブロック状の「キノコのお肉」がそのまま50g入った商品と、「キノコのお肉」の他にもマイタケなどの具材を加えて調理された「『キノコのお肉』食べるソース シリーズ」の「トマトソース」、「アヒージョ」、「ごま担々」。そして、雪国まいたけさんではこれまでもきのこごはんの素が販売されていたが、今回「雪国まいたけ ご飯の素 キノコのお肉入り」が登場する。

筆者は全て試食させていただいたが、どれも新しい食材であることを忘れるほど味が良い。「ごはんの素」は生姜の風味が効いた安定の美味しさだし、「食べるソース シリーズ」はそれぞれ個性が光っている。湯澤社長によるとこのシリーズは、様々なアレンジ料理のベースとなるようにあえて余白を残す味付けがなされているそうだ。調理のアイデアを出すのも楽しそうである。
—–使い勝手の良さ
今回発売される商品は全てレトルトパックということもあって、使い勝手もとても良い。「キノコのお肉」は様々な料理にそのまま追加するだけ。「食べるソース」はパスタや野菜と合わせるだけ。「ごはんの素」は混ぜて炊くだけ。筆者のようにほぼ毎日料理をする人間には救世主ですよ。「食べるソース」は味の濃さとしては何かと合わせてちょうど良いくらいなのだが、筆者は酒飲みなので、全然そのままでもいける。夜、お酒を嗜む紳士淑女たちよ、何か少し酒の肴が欲しいな、でもこの時間カロリー高いものは避けたいな、料理するのも面倒だしな、ということがよくあるでしょう。そんなとき、皿に盛ってチンするだけ。なにせきのこだから罪悪感も無い。そう、「キノコのお肉」ならね。とくに「アヒージョ」はおすすめ。「いくら酔っていてもオリーブオイルくらいかける余裕はあるのだよ。ふははは」などと謎の全能感に浸りながら最後にオリーブオイルを少しかければ、より香り高くなって完璧でしょう。主フの味方であり、酒飲みの味方。つまりあなたが主フであり酒飲みであれば、もう味方も味方。大味方。「食べるソース」の利便性で余ったあなたのリソースは、ぜひ何かクリエイティヴなことに使ってください。
—–きのこ?キノコ?
どなたか読者の中で「キノコのお肉」の表記に注目されたかたはおられるだろうか。
じつはきのこ業界では菌類の子実体のことは「きのこ」とひらがな表記するのが一般的である。筆者の本棚のきのこ関連本も、9割は「きのこ」表記になっている。今回雪国まいたけさんはこれを、躍動感や新しさを表現するためにあえて「キノコ」とカタカナ表記にしたそうだ。
さらに、商品パッケージの「キノコのお肉」の上の文言を見ていただきたい。2025年4月、雪国まいたけさんは社名を「ユキグニファクトリー」に変更するそうで、マイタケそのものにとどまらない分野への意気込みが感じられる。
—–2月18日(火)発売!
「キノコのお肉」は2025年2月18日(火)に発売となる。スーパーの(精肉ではなく)青果コーナーに置かれるはずだ。タンパク質の新しい摂りかたとして、それに何より料理の新たな可能性に期待が高まる。ぜひ読者諸氏も試していただいて、みんなで「キノコのお肉」を楽しみましょう🍄
株式会社雪国まいたけ公式サイト
https://www.maitake.co.jp/
コメント