黄色が鮮やかなこのキノコをご存知でしょうか?
これは”タモギタケ”というとっても美味しいキノコで、天然物は主に東北~北海道に自生し、全国各地で通年人工栽培もされています。
いわゆる”変り種キノコ”の一つに数えられますが、その中では生産量が多い方で意外と身近なスーパーで見かけることも。
また最近流行りの薬膳鍋屋さん等では見た目の華やかさと味の良さから定番具材になっています。
更に見逃せないのが美容の面でも優れた機能性を持っているという点です。
ということで今回はそんな気になるキノコ、タモギタケについて解説していきます。
タモギタケとは
タモギタケは主に東北から北海道にかけて自生する黄色いキノコです。
天然物は初夏から秋、切り株や倒木などから株状に発生し、カサの表面は鮮やかな黄色、カサ裏のヒダや軸は白色をしています。
そういえばキノコ問屋の営業マン(前職)時代、タモギタケを試食販売していたら
まぁ、きれいに塗ったのねー
とお声掛けいただいたのを思い出しました(笑)
それくらい鮮やかな黄色なんです。
(もちろん塗ったりはしていませんよ!)
タモギタケは上質なダシが出て香りも良く、美味しいキノコのため全国各地で人工栽培されていますが、特に北海道での認知度が高く人気があります。
その関係か北海道発祥のハンバーグレストランびっくりドンキーさんのランチスープ(味噌汁)に入っていたこともありますよ。
あれは美味しかったなぁ。
ちなみに、タモギタケという名前の由来は野球のバットの原料にもなるタモの木に生えていたことから。
でも実際はタモよりもニレ・ナラ・カエデの枯れ木から生える事の方が多いみたいです。
タモギタケはメディア受けが良いキノコ
鮮やかな黄色いタモギタケはカメラ写りが良く、しかもとても美味しいキノコのためメディアでもたびたび紹介されています。
テレビで取り上げられていた中で僕が特に印象に残っているシーンは、深田恭子さんが行きつけの天香回味(テンシャンフェイウェイ)さんという薬膳鍋屋に行き、『タモギタケが好き!』と言っていたことです。
いや本当に可愛いですね!(違う)
ちなみに、天香回味さんのようにキノコをウリにした薬膳鍋屋さんなどではタモギタケが出てくるケースがとても多いですよ。
きれいな黄色のキノコが出てきたらお客さんも嬉しいですもんね!
また北海道を舞台にしたジブリ映画『思い出のマーニー』にもタモギタケが登場します。
劇中でタモギタケの名前は語られていませんが、舞台が北海道であること、倒木から発生していること、そして季節が夏ということから、採取しているのは北海道で昔から人気の高いタモギタケだと言われています。
もしかしたらジブリの宮崎 駿さんやマーニー役の有村 架純さんも役作りのためにタモギタケを食べたかもしれませんね。
(2020年9月から提供開始され、”常識の範囲内”で使用が許されたジブリさん場面写真、ありがたく使わせていただきました!)
タモギタケは加熱すると黄色じゃなくなっちゃう?!
黄色がきれいなタモギタケですが実はちょっと弱点があります。
それは加熱すると色落ちして白(乳白色)っぽく変化してしまう事。
つまり、調理して食べる頃にはほとんど元の黄色は分からなくなってしまうんです。
『せっかくきれいな黄色いキノコだから、出来ればこの色を残したまま食卓に出せれば良いのにな』と誰もが思うのではないでしょうか。
実際にそういった声をいただいたこともあり、私も何度か色を残せないか実験してみたことがあります。
(どうもあの黄色い色素は水溶性みたいなので、フライパンで焼いてみたり、油で揚げてみたり、電子レンジでチンしてみたり。電子レンジで30秒程度加熱だとだいぶ色が残りました)
でもある時、タモギタケの生産者さんに
『色が落ちると言う事は旨味や栄養がしっかり溶けだした証拠。そのくらいまで加熱した方が美味しいんですよ』
と言われてハッとされられました。
そうだよなぁ、色も大事だけど、美味しく食べてもらった方がタモギタケも嬉しいよなぁと。
それ以降はあまり黄色を残す事にこだわらず、美味しく食べることに注力するようにしています。
タモギタケの効能
タモギタケは美味しい食菌ですが、実は2種類の機能性でもとても注目されています。
- 免疫力をアップする効果が期待できるβ-グルカンを豊富に含む
- 美白や保湿・アンチエイジングが期待されるエルゴチオネインを含む
そのため健康食品やサプリメント、化粧品などの原料にも利用され、食品ではなく原料用としてタモギタケを栽培している生産者さんもいるくらいなんです。
β-グルカン(ベータグルカン)とは
キノコ類に多く含まれる食物繊維の一種。
β-グルカンを摂取していると体の免疫力が上がり、病気になりにくい”強い体”になるといわれています。
エルゴチオネインとは
あまり聞き慣れないかもしれませんが抗酸化作用が強いとされ今注目されている成分です。
抗酸化物質の代表としてよく出てくるビタミンEに比べて約7,000倍(!)というとても優れた抗酸化作用があり、肌の老化を抑制したりシワを防ぐアンチエイジング効果があるといわれています。
エルゴチオネインは動物や植物の中にもあって抗酸化の役割を担っていますが、動植物は自分達の中でエルゴチオネインを作りだす事が出来ず、『別の生物』が作ったエルゴチオネインを摂取するしかありません。
その『エルゴチオネインを生成できる別の生物』がタモギタケなどの一部の菌類なんです。(キノコを含む一部の菌類と一部の細菌)
呼吸によって体内に入ってきた酸素の一部が体内で”活性酸素”に変わります。
この活性酸素が蓄積すると身体にいろいろ悪さをして生活習慣病などの病気にかかりやすくなります。
この活性酸素を抑える物質を抗酸化物質と呼び、その働きを抗酸化作用(抗酸化力)と言います。
タモギタケのエルゴチオネインを効果的に摂取する方法
エルゴチオネインを含むキノコを加熱調理しても、抗酸化作用はあまり変化しないと言われています。
一方、エルゴチオネインは水溶性で水に溶けだしてしまうので、余すことなく摂取するためには煮汁を捨ててしまう料理法は向きません。
タモギタケの美容効果をしっかり得たいと考えるならば、溶けだした栄養素もまるごと飲めるスープや、焼き物、炒め物などの料理がおすすめです。
タモギタケのおすすめの食べ方
タモギタケは味・香ともによく歯ごたえもあるので色々な料理に利用できます。
- 唐揚げ
- バターソテー
- シチュー
などなど。
また、魚介のようにも感じられる美味しいダシが出るのと、栄養素をしっかり取る意味でも味噌汁などスープに入れるのもおすすめです!
タモギタケの簡単レシピ
最後にタモギタケを使った簡単中華スープのレシピをご紹介します。
今回は鍋を使わずスープジャーだけで調理してみました。
《料理名》
『タモギタケの中華スープ(スープジャー.ver)』(1人前)
《調理時間⌚》10分(蒸らし時間は除く)
《材料》
- タモギタケ:半パック(約30g)
- 長ネギ(薄切りスライス):10g
- しょうが(薄切りスライス):1枚
- コンソメキューブ:1個
- ごま油:適宜
- 胡椒:適宜
- お湯:適量
《作り方》
- 長ネギスライスとしょうがスライスをスープジャーに入れ熱湯を注ぎ、フタを閉めて置きます。
- 2分たったらお湯を捨てます。(中の具材まで捨てないように!)
2分間熱湯に浸ける事で長ネギの生煮えを防ぎ、同時にスープジャーも温められます。 - 手で食べやすい大きさに裂いたタモギタケとコンソメ・ごま油・胡椒をスープジャーに入れ熱湯を注ぎます。フタを閉めて1時間以上放置。
- 1時間経ったら出来あがり!
タモギタケは手で簡単に割けるので包丁要らず。楽ちんです♪
1時間経っても余裕で熱々、さすがまほうびん構造!
スープを飲んでみると、しっかりタモギタケの魚介にも似た旨味が溶け出しているのが感じられます。
旨いんだぁ、これが。
ダシと一緒にエルゴチオネインもしっかり溶けだしている事でしょう(たぶん)。
またタモギタケも程よい食感で美味。
お鍋を使わずに簡単に調理できるので、一人分のご飯を作る時などには便利なレシピですよ!
幸せの黄色いタモギタケ、まとめ
- タモギタケは黄色が鮮やかなきれいなキノコで日本各地で人工栽培されている
- 優秀な食菌で味・香り共によく、魚介に似た美味しいダシが出る
- β-グルカンやエルゴチオネインを含んでいて機能性にも優れていてる
- エルゴチオネインは美容に良い成分で、一部の菌類しか作り出すことが出来ない
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