『きのこって野菜売り場で売っているし植物の一種だよね?』
そう思っている人は多いのではないでしょうか。
いえいえ、違うんです。
かといってもちろん動物でもありません。
きのこは菌類です。
目に見える大きさの子実体(しじつたい、私たちが食用にしている部分)を作る菌類を”きのこ”と呼んでいます。
今回はそんなきのこの正体に迫りたいと思います。
きのこは菌類
きのこは『菌類』というグループに属しています。
昔『動物界』と『植物界』だけに分けられていた時代にはキノコは下等植物に分類されていました。
『植物なのに葉緑素を持っていなくて光合成出来ないから”下等植物”』だなんてきのこからしたら失礼しちゃう話です。
だって植物じゃ無いんですもん。
今は『菌類』または『菌界』という独立したグループとして扱われています。
きのこもホッとしたことでしょう。
菌類にも、納豆菌とか麹菌とか乳酸菌とかいろんな種類がありますが、その中でも胞子を撒くために作る『子実体』という器官が目で見えるくらい大きいものを『きのこ』と呼んでいます。
子実体とは
きのこは糸状の菌、菌糸(きんし)を伸ばして成長していきます。
例えば椎茸は原木と呼ばれる丸太の内側にどんどん白い菌糸を伸ばします。
そして成長しきっていよいよ子孫を残さなきゃというところである器官を作ります。
胞子を撒くためにニョキッと生やす器官、それが子実体です。
いわるゆ私たちが食べている部分にあたります。
この子実体が目に見えるくらい大きい菌類を特にキノコと分類しています。
植物ときのこの違い
きのこと植物の違いはきのこは葉緑素を持っていないということです。
植物は水と二酸化炭素を吸収し、緑色の葉っぱに太陽光を当てることで光合成して栄養分を作ります。
そしてその副産物として酸素を生み出しています。
一方きのこは葉緑素をもっていなくて自分でエネルギーを作れないので落ち葉や枯れ木、虫の死骸などを分解することで栄養を得て生きています。
≪落ち葉を分解するオチバタケ≫
きのこは私たち動物と同じように酸素を吸って二酸化炭素を吐いています。
きのこは森の掃除屋さん
きのこは『分解者』として、地球上で大事な役割を担っています。
枯れ木や落ち葉、虫の死骸を食べることで分解してまた土に戻していくんです。
特に木の茶色を作るリグニンという成分はキノコの出す酵素により最終的に分解されます。
キノコや菌類がいないと、森は動物や植物の死骸ですぐ一杯になってしまうため、きのこは森の掃除屋さんとも呼ばれています。
ところで冬虫夏草(とうちゅうかそう)って知っていますか?
虫の寄生するきのこの総称です。
写真はカメムシタケという、カメムシに寄生するキノコ。
他にもクモに寄生するクモタケやアリに寄生するタイワンアリタケ、オサムシタケなどがあります。
ちなみに一部の冬虫夏草は非常に薬効が高いとされ漢方薬として重宝されています。
また分解者ではなく植物と共生して、お互いに栄養をやり取りして生きているきのこもいます。
菌根菌(きんこんきん)という種類で、例えば高級キノコの松茸やポルチーニは菌根菌です。
腐朽菌 | 枯れ木や落ち葉を分解する |
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寄生菌 | 生きた状態の虫などに寄生し、やがて死骸を分解する |
菌根菌 | 木の根と菌糸を結びつけた菌根をつくり互いに栄養をやり取りする |
私たちが食べるきのこはほとんど腐朽菌
最初に戻ってスーパーで売っているきのこの話。
今スーパーではどんなきのこが売っているでしょうか。
椎茸、舞茸、なめこ、エリンギ、えのき、ぶなしめじ、マッシュルームが一般的な7種類と言えると思います。
いわゆる栽培きのこの神7ですね。
この他、タモギタケ、ヤマブシタケ、丹波しめじ(ハタケシメジ)、本しめじ、ひらたけなどなど、最近は栽培技術の向上でたくさんの種類のきのこが販売されています。
余談ですがきのこ問屋では変り種きのこと呼んでいました。
実は、栽培きのこのほとんどが木材腐朽菌という、枯れ木などを分解して成長する菌たちです。
木材腐朽菌のきのこは比較的栽培がしやすく、オガクズやトウモロコシ芯を粉砕したもの、おから、米ぬかなどを原料にして栽培されています。
一方菌根菌は栽培が難しくまだまだ研究段階で栽培技術が確立されていません。
だから松茸やポルチーニは天然ものしかないため高級なんです。
腐生菌 | マッシュルーム ササクレヒトヨタケ ハタケシメジ |
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木材腐朽菌 | しいたけ まいたけ なめこ アラゲキクラゲ タモギタケ えのき ぶなしめ |
菌根菌 | 松茸 ヤマドリタケ(ポルチーニ) タマゴタケ |
寄生菌 | サナギタケ 冬虫夏草 |
きのこの胞子の飛ばし方
先ほども少し触れたように、きのこは子実体から胞子を飛ばして子孫を増やします。
例えばこのきのこ。
皆さん、きのこはどこから胞子を飛ばすか分かりますか?
椎茸やぶなしめじ、マッシュルームの様にカサを持つキノコは、カサ裏にあるヒダから胞子を飛ばします。
これは椎茸の胞子が飛ぶ様子を観察した動画です。
真っ暗い部屋でライトで照らしてあげると椎茸の胞子がふわりふわりと飛んでいるところを見る事が出来ます。
風に乗りやすく少しの風でも遠くまで飛ぶことができます。
こうやって広範囲に子孫を残してきたんですね。
他にも面白い胞子の飛ばし方をするキノコたちがいます。
これはツチグリ。
刺激を与えるとてっぺんの穴からホコリのような胞子を飛ばします。
自然界では動物が当たったり雨などが刺激になります。
ホコリタケも同様にてっぺんの穴から胞子を出すきのこです。
キヌガサタケはレースがとても美しい立ち姿から『きのこの女王』と呼ばれています。
てっぺんのグレバと呼ばれる器官から強い匂いを発し虫をおびき寄せ、虫に食べられ糞となって胞子を遠くに運びます。
コプリーヌという商品名で販売もされているササクレヒトヨタケ。
成菌になると一夜で溶けてしまうことから一夜茸(ひとよたけ)の名がついています。
なぜ溶けるかというと、実は胞子を撒くためなんです。
成長すると自分で分解酵素を出し身体をどろどろに溶かし、菌が含まれた液体を地面に落とすことで子孫を増やしています。
きのこって植物の仲間なの?のまとめ
ということで今回はきのこの基本中の基本的な部分を書かせていただきました。
できるだけわかりやすく噛み砕いて説明したつもりですがいかがでしたでしょうか?
今回のポイント
- きのこは植物でも動物でもなく菌類です。
- 落ち葉や朽ち木などを分解して養分を得るため、森の掃除屋さんと呼ばれています。
- 様々な方法で胞子を拡散し子孫を残しています。
それにしてもきのこってなんとも不思議な生き物ですよね。
しかも可愛い!
知れば知るほど興味が尽きない子たちなのです。
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