秋の時期に見られる代表的な天然きのこの情報をまとめました。
きのこ散策のお役に立てましたら幸いです。
※種類はだんだん増やしていきたいと思います。
食毒に関して記載していますが目安として考えていただき、複数の図鑑と見合わせるなどして慎重に判断してください。
また疑わしい場合は食べないでください。
マツタケ
【漢字】松茸
【英名】Matsutake mushroom
【学名】Tricholoma matsutake
マツタケのData
発生時期 | 初秋から晩秋(8月下旬~11月) |
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分布地域 | 日本、韓国、中国、ロシア、北アメリカ、北ヨーロッパ |
発生環境 | 主にアカマツなどの針葉樹林 |
カサの色 | 茶色から黄褐色、表面に繊維状の鱗片 |
大きさ | カサの直径6~20cm、柄の高さ5~15cm |
食毒 | 可食(高級食材) |
別称 | ー |
科属 | キシメジ科 / キシメジ属 |
分類 | 外生菌根菌 |
似ているきのこ | バカマツタケ、ニセマツタケ、マツタケモドキ |
マツタケの特徴
マツタケは、日本で非常に高価で珍重される秋の代表的な天然キノコです。
香りが特に強く、独特の『マツタケの香り』と称される芳香が特徴的です。この香りの主成分はマツタケオールであり、その中のケイ皮酸メチル(メチルシンナメート)が特有のものです。
カサは茶色から黄褐色で、表面に繊維状の鱗片が見られることがあります。成長初期のマツタケは、カサがまだ開いていない『つぼみ』状態であり、食感がしっかりしているため、特に高値で取引されます。
マツタケは主にアカマツとの共生関係を持つ『菌根菌(きんこんきん)』です。秋の涼しい時期に発生し、日本各地で採取されますが、環境の変化や森林伐採などにより、その発生量は減少しています。2020年7月には国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されました。
香りを生かしたシンプルな調理法が好まれ、焼きマツタケや土瓶蒸しなど、さまざまな料理に利用されます。また、炊き込みご飯やすき焼きなどの高級料理にも用いられ、日本では正月やお祝い事のおせち料理にも使用されることから、縁起の良い食材としての側面もあります。
なお、日本では高級食材として珍重されますが、欧米では『靴下の臭い・履き古した靴の臭い』などと表現され、あまり好まれない傾向があります。
マイタケ
【漢字】舞茸
【英名】Hen of the Woods
【学名】Grifola frondosa
マイタケのData
発生時期 | 秋(9月~11月) |
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分布地域 | 日本、中国、北アメリカ、ヨーロッパ |
発生環境 | 広葉樹の根元、特にナラやカシの木 |
カサの色 | 灰褐色から黒褐色、ひだ状の房が密集 |
大きさ | 全体の大きさ20~50cm、カサの直径3~10cm ※1株で直径50cm、重さ20kgになることもある |
食毒 | 可食 |
別称 | ー |
科属 | トンビマイタケ科マイタケ属 |
分類 | 木材腐朽菌 |
似ているきのこ | サルノコシカケ類 |
マイタケの特徴
マイタケは、その名の由来にもあるように、『見つけると嬉しくて舞い踊るほど美味しい』と言われるほどの珍重されたキノコです。
カサは灰褐色から黒褐色で、房状に重なり合い、カサの裏には白い管孔が特徴です。カサの形は扇形やヘラ型など多様で、大きな株は直径30cm以上、重さ45kg以上に成長することもあります。
マイタケは広葉樹、特にナラやカシの木の根元で発生します。秋が最も発生しやすい時期で、古くから食用として親しまれ、独特の歯ごたえと風味が特徴です。焼き物、炒め物、天ぷら、鍋料理など、和食から洋食、中華まで幅広く利用されます。
マイタケは地下のイモ状の構造(菌核)から成長し、複数の灰褐色のカサが集まって大きな塊を形成します。また、マイタケは多糖類を含み、その効果について研究されています。
ナラタケ
【漢字】楢茸
【英名】Honey Fungus
【学名】Armillaria mellea complex
ナラタケのData
発生時期 | 秋(9月~11月) |
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分布地域 | 日本、ヨーロッパ、北アメリカ、アフリカ |
発生環境 | 広葉樹や針葉樹の倒木、切り株 ※生きている木の根元に発生することもある |
カサの色 | 黄褐色から茶褐色、表面に細かい鱗片 |
大きさ | カサの直径3~10cm、柄の高さ5~15cm |
食毒 | 可食(加熱調理が必要) |
別称 | ボリボリ、アマンダレ、アシナガ、オリミキ、サワモダシ、モダシ、モタツ、ササコ、ザーザー |
科属 | キシメジ科ナラタケ属 |
分類 | 木材腐朽菌、植物寄生菌 |
似ているきのこ | クリタケ、エノキタケ、コレラタケ |
ナラタケの特徴
ナラタケは、倒木や切り株、さらには生きている樹木の根元に群生することで知られるキノコです。黄褐色から淡黄色の傘を持ち、中央部には細かい鱗片、周囲には放射状の条線が特徴的です。
食用キノコとして人気がありますが、生食は中毒の危険があるため、必ず加熱調理が必要です。
ナラタケは倒木や切り株、生きている樹木の根元に群生し、強力な木材腐朽菌として森林生態系で重要な役割を果たしています。
一方で、ナラタケは『ナラタケ病』の原因菌としても知られています。この病気は、ナラタケが生きた樹木の根に寄生し、徐々に樹木を弱らせて最終的に枯死させるものです。ナラタケ病は林木、コーヒー、チャ、ゴム、果樹、庭木など、様々な植物に被害を与える可能性があり、農林業に深刻な影響を及ぼすこともあります。
このように、ナラタケは食用としての価値と生態系への影響、さらには農林業への脅威を併せ持つ、多面的な特徴を持つキノコといえます。
シイタケ
【漢字】椎茸
【英名】Shiitake
【学名】Lentinula edodes
シイタケのData
発生時期 | 春(4月~5月)、秋(9月~11月) |
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分布地域 | 東アジア、東南アジアの高山帯、ニュージーランド |
発生環境 | コナラやクヌギ、シイ、ブナなどの広葉樹の倒木 |
カサの色 | 茶褐色、表面にひび割れ模様が出ることがある |
大きさ | カサの直径5~20cm |
食毒 | 可食(加熱調理が必要) |
別称 | ナバ、冬菇(どんこ)、香信(こうしん)、香菇(こうこ) |
科属 | キシメジ科シイタケ属 |
分類 | 木材腐生菌 |
似ているきのこ | ツキヨタケ、クリタケ、ナメコ |
シイタケの特徴
天然のシイタケは、コナラやクヌギ、ミズナラなどの広葉樹の倒木や切り株に自生するキノコです。カサは茶褐色で、成長するとひび割れ模様が現れ、周辺部には綿毛状の鱗片がつくことが特徴です。主に春と秋に収穫され、秋に生えるものは特に大きくなることがあります。
シイタケは香りが強く、肉質もしっかりしており、焼き物や煮物など様々な料理に使われます。食用としても非常にポピュラーで、特に日本料理では欠かせない存在です。また、干しシイタケは出汁をとるのに用いられる重要な乾燥素材でもあります。
なお、天然シイタケを採取する際は、食中毒の原因となるツキヨタケとの見分けに注意が必要です。
サクラシメジ
【漢字】桜占地
【英名】Russula-like Waxy Cap
【学名】Hygrophorus russula
サクラシメジのData
発生時期 | 秋(9月~11月) |
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分布地域 | 日本、中国、韓国など北半球の温帯域 |
発生環境 | クヌギ、コナラ、ブナなどブナ科の広葉樹林の地上 特に落ち葉が堆積した場所 |
カサの色 | 淡いピンク色や薄い紫色 |
大きさ | カサの直径5~12cm、柄の高さ5~10cm |
食毒 | 可食 |
別称 | ピンクシメジ、アカモタシ、アカキノコ、タニワタリ、アカナバ、ドヒョウモタセ |
科属 | ヌメリガサ科ヌメリガサ属 |
分類 | 外生菌根菌 |
似ているきのこ | ー |
サクラシメジの特徴
サクラシメジは、淡いピンク色や薄紫色の美しいカサを持つキノコで、特に秋にクヌギ、コナラ、ブナなどブナ科の広葉樹林の地上に発生します。名前の『桜』はそのカサの色合いが由来。
カサは初めまんじゅう形で、成長すると中央が中高の扁平になります。また、カサの表面は湿っている時に粘りを生じるのが特徴です。ヒダは白色地に深紅色のシミがあり、やや密で厚みがあります。
味はシメジの中でも優れていますが、多少の苦味があるため、調理前に軽く湯がいてから使用するとよいでしょう。特に油を使った炒め料理や煮込み料理に適しています。
なお、サクラ色の傘は、煮るなど熱を加えると黄色く変色するという特徴があります。
ヒラタケ
【漢字】平茸
【英名】Oyster Mushroom
【学名】Pleurotus ostreatus
ヒラタケのData
発生時期 | 秋から春(9月~5月頃) |
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分布地域 | 日本、アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、オーストラリア |
発生環境 | コナラ、クヌギ、ブナなどの広葉樹の倒木や枯れ木 |
カサの色 | 幼菌時にはほぼ黒色、成長とともに灰褐色→灰色→淡色と変化 |
大きさ | カサの直径5~20cm |
食毒 | 可食 |
別称 | カンタケ(寒茸)、アワビタケ、オイスターマッシュルーム |
科属 | ヒラタケ科ヒラタケ属 |
分類 | 木材腐朽菌 |
似ているきのこ | ツキヨタケ、ムキタケ |
ヒラタケの特徴
ヒラタケは、広葉樹の枯れ木や切り株に自生する人気のきのこです。その特徴的な平たい形状から名付けられ、英語では『オイスター・マッシュルーム』と呼ばれています。
ヒラタケの傘は平べったく横に広がり、直径は5〜15cm程度。カサ表面の色は白からクリーム色、薄い茶色まで様々で、触り心地は滑らかです。柄は短く、傘の端に偏って付いていてヒダは白色です。
天然のヒラタケは主に晩秋から春にかけて発生します。群生することが多く、時には幾重にも重なって大きな塊になることもあります。ただし、見た目が似た有毒きのこもあるため、採取には注意が必要です。
栄養面では低カロリーながら栄養価が高いのが特徴です。特にビタミンD、ビタミンB群、食物繊維(β-グルカン)が豊富で、免疫力の強化やダイエットをサポートする効果が期待されています。
食感は肉厚でしっかりしており、炒め物やスープ、揚げ物など幅広い料理に使われます。独特の食感と風味があり、和洋中問わず多くの料理に合います。
寒い季節に発生するため、冬場の貴重な食用キノコとしても知られています。
ナメコ
【漢字】滑子
【英名】Nameko mushroom、Butterscotch mushroom
【学名】Pholiota microspora
ナメコのData
発生時期 | 秋~冬(9月~2月頃) |
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分布地域 | 日本、韓国、中国 |
発生環境 | 広葉樹の倒木や切り株 |
カサの色 | 黄褐色から橙褐色 |
大きさ | カサの直径3~10cm、柄の高さ4~8cm |
食毒 | 可食 |
別称 | ヌメリタケ、ナメタケ |
科属 | モエギタケ科スギタケ属 |
分類 | 木材腐朽菌 |
似ているきのこ | チャナメツムタケ、ヌメリスギタケモドキ、クリタケ、エノキタケ |
ナメコの特徴
ナメコは、その表面がぬめりを帯びた黄褐色のカサが特徴的なキノコです。日本では非常にポピュラーで、特に鍋料理や味噌汁に用いられます。
天然のナメコは、主に秋から冬にかけてブナやナラなどの広葉樹の枯れ木や切り株に発生します。カサは粘液質で、湿った状態では非常に滑りやすくなります。ヒダは密で、初めは淡色ですが、成熟すると褐色になります。
ナメコのぬめりは加熱することで増し、料理に独特の食感と風味を与えます。調理法としては、味噌汁やそばの具、鍋物に最適です。また、さっと茹でてから大根おろしや山芋と和えるなど、さっぱりした料理にも向いています。
天然のナメコは栽培品よりも粘りが強いのが特徴です。ただし、天然のナメコはほとんど市場に出回っておらず、店頭で見かけるものの99%は菌床栽培されたものです。
ムキタケ
【漢字】剥茸
【英名】Late Fall Oyster、Late Oyster
【学名】Sarcomyxa serotina
ムキタケのData
発生時期 | 秋から冬(10月~12月) |
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分布地域 | 日本、中国、ヨーロッパ、北アメリカ |
発生環境 | ブナ、コナラ、ミズナラ、シラカバ、ハンノキ、イタヤカエデ、トチノキなどの広葉樹の倒木や枯れ木 |
カサの色 | 黄緑色から褐色 |
大きさ | カサの直径5~20cm |
食毒 | 可食 |
別称 | カタハ、ノドヤキ、ノドヤケ、ハドコロ、フクロ、ボタヒラ、ムクダイ、ワカムキ |
科属 | ガマノホタケ科ムキタケ属 |
分類 | 木材腐朽菌 |
似ているきのこ | ツキヨタケ、ヒラタケ |
ムキタケの特徴
ムキタケは、古くからきのこ狩りで親しまれ食べられてきたきのこの一つです。
カサの直径は5〜15cm程度で、半円形で黄褐色を呈し、全面に微毛があります。特徴的なのは表皮下にゼラチン層があり、表皮が簡単にむけることです。ムキタケの名前の由来は、きのこの表皮がつるっとむけやすいところからきています。
ヒダは密で黄白色、柄はごく短く、傘の端に偏って生えています。ヒラタケに似ていますが、表面の質感や色合いが異なり、より粘性があるのが特徴です。
ムキタケは主に秋に発生し、ブナなどの広葉樹の枯れ木や倒木、切り株の上に多数重なり合って生えます。
ツルッとした舌触りで食感が良く、味噌汁、煮物、野菜炒めなどにすると美味しいです。
注意点として、毒きのこのツキヨタケと似ているため、採取の際は十分な注意が必要です。
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