中華料理の八宝菜やタイ料理のトムヤンクンの中に、こんな形のキノコが入っているのを見たことがありませんか?
よく見ると、袋の中に小さなキノコが収まっているみたいな不思議な形をしています。
(そこが可愛いところ!)
このキノコは『フクロタケ』と言います。
日本ではまだあまり馴染みがないですが世界では結構食べられていて、実は世界三大栽培キノコの一つにも数えられています。
先日、そんなフクロタケを20年前から栽培している、群馬県の『日本ふくろ茸ファーム』さんにお伺いしてきました。
今回はその取材レポートです!
フクロタケ(袋茸)とは
フクロタケは食用に栽培されているキノコの一つです。
袋の中にキノコが入っているような形状をしていることから、和名は袋茸と命名されました。
実はこれは幼菌の状態で、成長すると袋を破ってカサや軸が出てきます。
フクロタケの成菌はツボがあって、ちょっとタマゴタケの形に似ていて可愛いんです!
主に袋に入った幼菌の状態で流通・販売され、いろいろな料理に使われています。
特に中華料理やタイ料理と相性が良いようです。
日本ではあまり馴染みが無いですが世界的にはニーズが高く、マッシュルーム・シイタケと共に”世界三大栽培キノコ”の一つに数えらています。
栽培に稲わらなどを使うため、英名は『Paddy straw mushroom(稲わらのきのこ)』
国産のフクロタケがあるらしい
日本でも、中華料理屋さんやタイ料理屋さんに行くと料理の中にフクロタケが入っているのを見かけることがあります。
が、これら日本で流通しているフクロタケはほぼほぼ輸入の水煮商品で、残念ながらほとんど味は無くなってしまっています。
もともと日持ちしないキノコですので、海外からフレッシュ(生)で仕入れて流通させるのは難しいのでしょう。
そんな中、なんと日本の群馬県でフクロタケを栽培されている方がいるという情報をキャッチ!
国産のフクロタケだって?! かなりの貴重品じゃないか。
ぜひ取材させてほしい!
ということでさっそくアポイントをとり、農場にお伺いしてきました。
日本ふくろ茸ファームさんにお伺いしてきた
国産フクロタケは群馬県榛東村で栽培されています。
対応いただいたのは、日本ふくろ茸ファームの戸田 裕司さん。
本業は広告デザイン業とのことですが、ずっと食料生産をやりたいと考えていたそうで、『どうせならだれもやっていないものを』と考え、フクロタケ栽培を始められました。
フクロタケの栽培を始めてから、もう20年も経つそうです。
安定して収穫できるようになったのはここ10年とのこと。
いつかはフクロタケ栽培を本業にしたいと考えているそうで、関東きのこの会でも応援したいと思います!
さっそく戸田さんにフクロタケの圃場を見させていただきました。
フクロタケは、こういったコンテナの中で栽培されています。
菌床は稲わらの堆肥と綿が主原料。
大きなベッドに堆肥を敷き詰める栽培方法は、マッシュルーム栽培と似ています。
カメラレンズが曇るくらい湿度が強く、またかなり暖かい環境です。
ほぼサウナ状態。
あ、いました!
ポコポコ発生しているフクロタケ。
ちょっとモフモフした小動物みたいでかわいい!
収穫が間に合わず、カサが開いているのも結構ありました。
菌床の上からだけでなく、横や下からも発生するので収穫がかなり大変みたいです。
収穫したてのフクロタケがこちら。
なんか一見キノコには見えないですね。
生フクロタケをソテーとスープで食べてみた
収穫したフクロタケを半分に割ってみると・・・
お、中にキノコがいる!
これぞよく中華料理に入っているフクロタケです。
『ちょっと食べてみますか?』
と戸田さんがコンロとフライパンを出してきてくれました。
まずは、オリーブオイルでソテーして塩コショウだけでいただいてみます。
おわっ、すごい旨味!
フクロタケは食感がメインのキノコだと思っていましたが、生で食べるととても旨味があります。
それにジューシー!
これはかなり出汁がとれそうです。
次は炒めたフクロタケに水を加えてスープに。
あ、やっぱり出汁が旨い!
なんかほっとする~
フクロタケは、味・食感共にかなり優れた食用キノコであることが分かりました。
フクロタケの生販売は難しい
水煮製品からは想像もつかないほど濃い旨味を持っているフクロタケ。
『これは売れる!(キラーン)』と、元きのこ問屋営業マンの頭に電卓が浮かんだのですが・・・
生産者の戸田さんいわく、実はフクロタケは気軽に拡販出来ない理由があるそうなんです。
フクロタケの最大のネック。
それは『日持ちの悪さ』です。
それゆえに、生鮮での販売がとても難しいということでした。
フクロタケの保存可能日数と保存方法
生のフクロタケは気温が極端な夏や冬は収穫後1日、春秋でも2日くらいしかもたないそうです。
たしかにその日持ちでは、スーパーや八百屋さんで売るのはなかなか難しいでしょう。
また、以前は直売所に出していたこともあるそうなのですが、売り場で成長して袋を破ってキノコが出てきてしまいクレームになってしまったとのこと。
『だから流通しているのは水煮だけなんですよ。だけど水煮は美味しくないから、日本ではいまいち認知されないキノコになってしまっているわけです』と戸田さん。
なるほど、これは難しい・・・
さらに、キノコ全体が白いフワフワした菌糸に覆われる事も多いそう。
これは気中菌糸(きちゅうきんし)と言ってキノコの一部で、ブナシメジやエリンギ、ヒラタケなどにも良く生えますし、キノコの菌糸なので食べても全く問題ありません。
ただ、カビと勘違いされてクレームになることも多く、それが業界の悩みのタネにもなっています。
気中菌糸について、詳しくはこちら↓
ちなみに、フクロタケの保存適温は15~20℃なので、常温(室温)で保存するのが良いそうです。
冷蔵庫に入れると一晩で水が出てブヨブヨになってしまいます。
冷凍フクロタケなら流通できる
日持ちしない、売り場で成長してしまう、菌糸が付着する・・・
これは元きのこ問屋営業マンからしても、なかなか売るのが大変そうなキノコです。
では、日本ふくろ茸ファームさんはどうやってフクロタケを流通・販売しているのかと言いますと。
『冷凍フクロタケ』だそうです!
収穫直後の新鮮なフクロタケを冷凍し、その後冷凍焼けを防ぐためさらに真空パックに詰めなおしているそう。
なるほど、これならフクロタケの美味しさを保ったまま流通できそうです。
冷凍フクロタケは解凍するとドリップが出てしまうので、料理する時は凍ったまま使います。
冷凍品は、カットせず丸のままパック詰めされていますが、5分くらい常温に置いておけば凍ったまま包丁で半割りに出来るそう。
通販でも販売されているので、ご興味ある方はぜひ取り寄せてみて下さい。
実は成菌のフクロタケも美味しい
話を聞けば聞くほど貴重さがわかるフレッシュ(生鮮)のフクロタケ。
実は日本ふくろ茸ファームさんから、商品として出せないというカサが開いたフクロタケを少し分けてもらってきました。
次回からは冷凍フクロタケを取り寄せるとして、今回はこれでいろいろな料理を試してみたいと思います。
ちなみにフクロタケは新聞紙に包み、ビニール袋に入れて群馬から神奈川まで車で持ち帰ったのですが、家に着いた時には新聞紙がびっしょりになっていました。
慌ててお皿の上に取り出し、水気を切ります。
これは本当に生鮮流通は難しいと実感。
あまり日持ちがしないということで、翌日さっそく料理に使いました。
作ったのは天ぷらとトムヤンクン、それからお蕎麦の出汁。
『うおっ、開いたフクロタケの方が旨味が濃い気がする!』
カサが開いたフクロタケは、幼菌のものより食感は失われていますが、その分旨味が強い感じ。
ダシ取りにはこちらの方が良いと感じました。
美味しいです!
これが商品にならないっていうのはもったいなさすぎる・・・
日本では認知度が低くほとんど食べられていないフクロタケは、実はとても優秀な食菌でした。
冷凍品は気軽にお取り寄せできるので、ご興味ありましたらぜひおためしくださいませ~!
国産フクロタケのまとめ
- 日本で流通するフクロタケはほとんど輸入の水煮商品
- 群馬県にある『日本ふくろ茸ファーム』さんでは貴重な国産フクロタケを栽培している
- フクロタケは日持ちが悪く、国産でも生販売は難しい
- 国産フクロタケは冷凍で流通している
きのこ料理研究家 まんぼママの国産フクロタケレシピ
冷凍の国産フクロタケを使ったレシピです。
併せてご覧ください。
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